米空母セオドア・ルーズベルト。艦載機F/A-18などが並ぶ(提供:MCS 2NDC PAUL L. ARCHER/US NAVY/AFP/アフロ)
米空母セオドア・ルーズベルト。艦載機F/A-18などが並ぶ(提供:MCS 2NDC PAUL L. ARCHER/US NAVY/AFP/アフロ)

台湾有事のシナリオは兵糧攻めにとどまらない。最も激烈なのが、人民解放軍を大規模投入して空と海から侵攻する台湾着上陸戦だ。それを抑止すべく、米国はインド太平洋軍の事前展開を検討する。拠点とするのは在日米軍基地および自衛隊の施設だ。そのとき、日本はどうなるのか?

 前回まで、中国が台湾を兵糧攻めにするシナリオを取り上げ、日本が受けるダメージを考えてきた。

 だが、台湾有事のシナリオは兵糧攻めにとどまらない。例えば以下が想定される。(1)サイバー攻撃などで台湾社会を混乱させ、時の政権の評価をおとしめ、親中政権への交代を謀る(2)台湾の政治指導者を暗殺(3)特殊部隊を投入し短期間で政権を転覆させる奇襲作戦(4)内乱を起こし、現政権の転覆を謀る(5)弾道ミサイルによる攻撃──。

 そして最も激烈なのが(6)人民解放軍を大規模投入して空と海から侵攻する台湾着上陸戦だ。

 現時点では米国の方が戦力面で優位にあり抑止が働いているとみられる。下の表は、香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官による戦力分析を示す。「『通常兵器においては中国側が既に上回っている』との分析は在日米軍と在韓米軍しか勘定に入れていないから。インド太平洋軍で見れば米軍が勝っている」(同氏)

[画像のクリックで拡大表示]

 それでも、仮に、台湾が法的に独立しようとしたり、米国が台湾を主権国家として承認しようしたりすれば、中国政府は勝敗を度外視して武力統一に進む――。これは米国、中国、台湾を研究する専門家の間でほぼ共通する見解だ。さらに、中国共産党が統一の期限とうたう2049年までを見据えるなら、今は不十分とみられる輸送能力も整うことだろう(関連記事「李登輝氏が四半世紀前に予言!?『台湾は日本の生命線』」)。

 よって、(6)は決して絵空事ではない。そして、米国が介入し、中国と軍事衝突する最悪の事態も想定しておく必要がある。これが現実となれば、沖縄県の与那国島をはじめとする先島諸島が戦域に入る恐れがある。日本としては何としても避けたい事態だ。

 ここからは、中国が台湾を占領すべく着上陸戦の準備を進めるシナリオを紹介する。米国はこれを抑止すべく、インド太平洋軍の日本への事前展開を検討する。

次ページ 南シナ海も朝鮮半島も連動して動く