この影響度の差はどこから生じるのか。輸入途絶額の大きさもさることながら、「上流性」が関係するという。中国から輸入する中間財が、サプライチェーン(供給網)におけるどの位置に存在するかを表す用語だ。輸入する中間財が上流に位置すればするほど、下流が長くなり、ダメージが大きくなる。
例えば電気機器と情報通信機器を比べると、輸入途絶額は同程度だが、日本全体の生産減少に与える影響は前者の方が大きい。同様に、生産機械と自動車産業の輸入途絶額は同程度だが、生産機械に関連する中間財の輸入途絶は自動車に比べ、日本全体の生産額をおよそ2倍減少させる。
中国の対米輸出において、日本より韓国の方が不可欠
日本が中国から輸入しているのは中間財だけではない。最終財にも影響が及ぶ。例えば携帯電話の輸入において中国製は約89%を占める。
ここでは、日本と中国の政治的な思惑だけでなく、日本と中国、台湾を結ぶ東アジアのサプライチェーンが負の影響を広めるの一役買う。既に言及したように、日本は台湾に向けて半導体製造装置や半導体生産に使うシリコンウエハーなど原材料を輸出している。台湾の対日輸入において、半導体製造装置の輸入額は総額の約11%を占める。台湾はこれを使って集積回路などの半導体部品を製造し、中国に輸出している。中国が輸入する集積回路の約36%は台湾からだ。これが入手できなければ、中国は日本に輸出する携帯電話を製造することができない。携帯電話は「半導体の芸術品」と形容される。
日中間の貿易が滞る負の影響は、もちろん中国にも及ぶ。日本だけが苦しむわけではない。
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この記事はシリーズ「台湾有事に備えよ! もし起こらば、そのとき日本は?」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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