ロシアがウクライナに侵攻して1年がたった。収束の兆しは依然として見えていない。この侵攻を歴史の流れに置いて見ると、経済のグローバル化という「統合」と、ソ連(当時)の崩壊を起点とする「分裂」が相まって引き起こした事象と位置づけることができる。この統合と分裂は今も、東アジアにおいて形を変えて存在している。「分裂」とは、中国と台湾の関係を指す。
加えて、3期目に入る習近平(シー・ジンピン)政権は、台湾統一を共産党の歴史的任務 と位置づける。「最大の誠意をもって最大の努力を尽くして平和的統一の未来を実現しようとしている」(日経新聞10月16日付)とするが、その環境は整わない。台湾の民意は「現状維持」であり、「統一」ではない。民主化を遂げた台湾は、国共内戦時の台湾とは異なる。
よって、中国が台湾武力統一に動く懸念が高まる。
その蓋然性はどれほどか。仮に、中国が動けば、いかなるシナリオが想定されるのか。そのとき、日本はいかなる状況に陥るか。企業は何に備えればよいのか。日米中の国際関係、経済、法制など、多面的な切り口で「台湾有事」のありようを分析する。
台湾有事が現実となれば、それは遠く離れた南の島で起きる他人事ではない。日本企業の「今」を左右する、私たち自身の問題となる。(写真=イメージマート)
※この連載は日経ビジネス2022年12月26日/23年1月2日号に掲載した「日本を揺るがす米中対峙のシナリオ 台湾有事を直視せよ 人、物、カネ全部止まる」を大幅に加筆修正してお贈りする。(写真=写真:イメージマート)