連載1回目の「固定電話廃止の三菱商事、『以和為貴』の精神をいま一度」は、IT(情報技術)関係者のみならず他業界の皆様からも反響をいただきました。IT部門向けの内容ではありましたが、変化にさらされているのはどの業界も一緒なのだと思います。

 私自身、入社時よりIT畑を歩んできたからか、常々感じている問題意識があります。IT部門は新しい技術を妄信するあまり、「Cool Head」は育っても「Warm Heart」を忘れていないかということ。「温故知新」を進めるためには「優しく謙虚な強さ」が必要だということでしょうか。

世間を騒がせた「二刀流」、元祖は400年前に生まれた彼

 2022年、日本人プレーヤーの「二刀流」が野球界を席巻しました。あの大谷翔平選手の素晴らしさを語る言葉はいくつもありますが、私は誰もやらなかったことを貫いた勇気が何よりも称賛に値すると感じています。京セラ創業者の稲盛和夫さんの名言、「次にやりたいことは、私たちには決してできないと(他人から)言われていることだ」をまさに体現してみせた姿勢は多くの人々に勇気を与えたはずです。

宮本武蔵は二刀流で有名だが、彼には悩みがあった(写真=アフロ)
宮本武蔵は二刀流で有名だが、彼には悩みがあった(写真=アフロ)
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 「二刀流」という言葉、英語には的確な表現がなく、まさに和の概念とも言えます。二刀流の元祖と言えばよく知られている「宮本武蔵」です。彼の生誕から400年以上を経て、この言葉がまさに現代で市民権を得ている様を、果たして武蔵はどうみているでしょうか。

 二刀流の源流となった二天一流は、太刀(長剣)と小太刀(短剣)を組み合わせた剣法で、まさに武蔵本人を剣の達人とならしめたものです。ここまでは有名ですが、私は武蔵の人生そのものが、二刀流で語れるのではないかということに着目しています。

 今回はこの「二刀流」というキーワードを軸にIT部門のキャリア形成について話してみたいと思います。