
本連載のタイトル「モビリティX」とは、「100年に一度」といわれる大変革期にある自動車産業の未来を占う最新キーワードである。
2016年ごろから、「CASE(コネクテッド:Connected、自動化:Autonomous、シェアリング:Shared、電動化:Electric)」という4つの破壊的な潮流が注目を集め、今まさに自動車産業はDX(デジタルトランスフォーメーション)の真っただ中にいる。そして、直近では「脱炭素化」の旗印の下に、SX(サステナビリティートランスフォーメーション)が、自動車産業の最重要テーマとして浮上している。
しかし、日本で行われている議論は「X=トランスフォーメーション(変革)」の掛け声で終わっているか、単なる「手段」が目的化してしまっているように見受けられる。例えば、自動車にIT機器を装備してネットワークにつなげるコネクテッド化を進めたり、自動運転機能を開発して安全走行を実現したりするのは、それ自体素晴らしいことだが、世界で起きている破壊的な潮流の本質はそこにとどまらないし、それだけでは視野が狭いのではないだろうか。
真のDX、SXとは、顧客起点による「新たな体験価値(X=エクスペリエンス)」の創造や、それをよりリッチなものとする「異業種融合(X=クロス)」の実現を伴うものだ。CASEにしても、各技術要素を個別の事象として捉えるのではなく、「掛け合わせ(X=要素のクロス)」ることで、全く新しい価値、体験、新ビジネスモデルを創造していくことが求められている。このようにして生まれるモビリティ産業の究極の変革の姿が「モビリティX」である。
本連載の執筆陣は、米国のテックジャイアント、GAFAM(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon、Microsoft)による破壊的なイノベーションを現地で体感してきた日本人の有志組織「シリコンバレーD-Lab」メンバー(デロイト トーマツ ベンチャーサポート、パナソニック ホールディングス、経済産業省所属)だ。
シリコンバレーD-Labは、現地の業界リーダーや有識者との議論から得られた情報を発信し、日本の産業復興へのきっかけを提供していくことを目的として活動している。これまで、17年からCASEやMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、モビリティの脱炭素化など、世界の潮流の“震源地”にいるからこそ分かる変化の本質をいち早く日本へリポートしてきた。第1弾リポートは経済産業省のセミナーで公開され、ホームページに掲載された後、僅か半年で17万ダウンロードという大反響を呼んだ。
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