日本経済の成長力回復に向けて「人的資本経営」の重要性が叫ばれている。人材を資本の一つとみなす考え方だ。では企業は実際にどのような取り組みを進めているのか。マツダ人事本部の竹内都美子本部長に話を聞いた。電動化をはじめとした大きな変革の波にさらされる自動車業界では、求められる人材像も変わりつつある。

自動車産業は「100年に一度の大変革期」にあるともいわれます。これを乗り切るために必要とされている人材について教えてください。

マツダ人事本部長・竹内都美子氏(以下、竹内氏):特に重要視しているのは現場を率いる中堅層です。これまでは部下をグイグイと引っ張っていけるリーダーが求められていました。「どういう車を造るのか」というポリシーははっきりしており、上意下達でものづくりが、あるいはビジネスが動いていたとも言えます。

 ですが足元の状況は大きく変わりました。「車とはそもそも何なのか」という根本が問われるような時代が訪れ、リーダーも明快な答えや指示を出すのが難しくなっています。

竹内都美子(たけうち・とみこ)氏
竹内都美子(たけうち・とみこ)氏
1997年、マツダに入社。電子技術開発部を経て評価ドライバーを約10年にわたり務める。2011年に車両開発本部、2015年に商品本部へ異動。マツダ初の女性主査として、同社初の量産EV(電気自動車)「MX-30」の開発を指揮した。2021年4月より現職(写真=森本勝義)

 「答えのない時代」を乗り越えていくには若手から中堅、ベテランまで、社員一人ひとりが持つ能力を伸ばし、その総力を結集していかなければなりません。つまり上意下達ではなく、「共に創る」、いわゆる「共創」のスタイルが求められているのです。

 リーダーとして現場を率いる中堅層はとても苦しんでいると思います。メンバーの力を伸ばし、彼らのアイデアを引き出していくスタイルにお手本はまだありません。これまで接したことのないリーダーシップを自分たちで模索していかなければならない。すごく難しい課題に直面しています。

竹内さんは長年、評価ドライバーとして活躍され、2015年には主査としてEV(電気自動車)、MX-30の開発を指揮。そして2021年4月、人事本部長に就任されました。いずれもマツダとしては女性初と聞きます。

竹内氏:人事本部長をやれと言われた際は正直驚きましたが、MX-30の開発で得た経験が、人事という経営の根幹に当たるレベルでも求められているのだと理解しています。

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