天才たちはどんな本を読んでいるのか? テスラのイーロン・マスク、アマゾンのジェフ・ベゾス、マイクロソフトのビル・ゲイツ。世界一の富豪になったイノベーターたちは、実は猛烈な読書家です。日経BPが出版した書籍『天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊』の一部を抜粋し、加筆・再編集してお届けする連載の第6回では、マスクが少年時代に経験した貧困を母親のメイ・マスクが書いた本などから読み解きます。
2022年4月に米フォーブス誌が公開した「2022年版 世界長者番付」でアマゾン創業者のジェフ・べゾスを抜いて1位になったイーロン・マスク。当時の資産額は約2190億ドル(12月中旬の為替レートで約30兆円)とされていました。最新の調査では、保有するテスラ株の下落で2位になっていますが、世界屈指の大富豪であることに変わりはありません。
意外かもしれませんが、少年時代のイーロン(本記事では母親のメイ・マスクや弟のキンバル、妹のトスカも登場するため、イーロンと表記します)は貧困生活を経験しています。幼い頃に両親が離婚し、収入が少ない母子家庭で育った時期があったからです。
イーロンの少年時代を知る上では、モデルで栄養士でもある母親のメイが書いた書籍『72歳、今日が人生最高の日』が参考になります。困難に負けない、メイのバイタリティーあふれる生きざまが描かれており、読むと元気をもらえる本です。この本はメイの伝記であるのと同時に、逆境でも前向きに生きようという“人生論”の教科書でもあります。

モデルというと華やかなイメージを持つ人が多そうですが、メイの人生は山も谷もある壮絶なものでした。メイによると、夫のエロールは驚くほど嫉妬深く、彼女は家庭内暴力に苦しんだ末に離婚を決意しました。そしてイーロンら幼い3人の子どもを抱えるシングルマザーとして食べていくために、メイはモデルの仕事に力を入れます。その生き方は、子どもであるイーロンにも強い影響を与えています。
メイが育ったのは冒険や探検が大好きな家庭です。父親は小型のプロペラ機を保有しており、家族でカナダや米国、欧州、アジア、オーストラリアを飛び回りました。そしてメイが幼い頃にカナダから南アフリカに移住します。メイは、両親に連れられて、ボツワナ、ナミビア、南アフリカにまたがる「カラハリ砂漠」で“失われた都市”と呼ばれる古代都市を探す旅にも出かけました。
毎年冬に3週間程度かけて砂漠を訪れ、両親と5人の子どもたちがそれぞれ方位磁針(コンパス)を持ち、野生動物を狩って食べることもありました。メイは家族と一緒に合計8回もカラハリ砂漠を探検しましたが、結局失われた都市を見つけることはできませんでした。
Powered by リゾーム?