マスクはなぜいじめられたのか?
それではなぜマスクは少年時代にいじめにあったのでしょうか?
1971年に南アフリカのプレトリアで生まれたマスクは、人見知りで内向的だったものの、記憶力に優れた聡明な子どもでした。読書が大好きで、みんながパーティーで集まっているときも、1人で書斎にこもって本を読んでいるようなタイプだったそうです。ときどき白昼夢を見ているような状態になり、周囲の人が大声で話しかけても返事をしなくなることがありました。社会性が低かったマスクは、まわりから見ると「なんだコイツは」と思われてトラブルになることが少なくなかったそうです。2021年になってマスクは、自らが「アスペルガー症候群だった」とテレビ番組で明かしています。
人付き合いが苦手なマスクはオタクのようなタイプで、スポーツなどで活躍して学校の中心にいるような社交的な少年ではありませんでした。ニューヨーク・タイムズの記事によると、マスクが通った南アフリカの高校の同級生も「マスクは親しい友人がいない孤独な少年だった」と述べています。マスクは少年時代に体が小さかったこともあり、いじめられやすかったそうです。当時通っていた高校のチェスチームの集合写真を見ると、最前列にあどけない顔をした小柄なマスクが写っていました。
2020年に中国のEV工場で開催されたイベントで、マスクがぎこちないダンスを踊っている動画が有名になりました。お世辞にもかっこいいとはいえず、高校のダンスパーティーで目立つようなタイプではなかったことがうかがえます。米国や、英国とその旧植民地の一部では、高校生活のハイライトがダンスパーティーになるケースが多いようです。
世界を驚愕させるイノベーターであるマスクは、雄弁な人物であるかのようなイメージを持たれることも少なくありません。しかし実際は違います。私が2012年にマスクをインタビューした際には、はにかんだような、自信なさげにも感じられる話し方をしていました。
テスラの戦略をプレゼンテーションする際にもうまく話せずに口ごもる場面が目立ち、マスクは吃音(きつおん)ではないかと指摘されたこともありました。それがいじめ体験と関係があるかどうかは分かりませんが、アップル創業者のスティーブ・ジョブズとは違って弁が立つタイプではないといえるでしょう。
マスクにとり、忘れられないトラウマになったいじめ体験ですが、この時期に人生に役立つかけがえのない宝も手に入れています。それが読書とプログラミングです。友達がほとんどいない少年が没頭した2つの趣味は、文字通りマスクの人生を変えました。
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