宇宙への投資は、地球の保護に役立つ

 ベゾスも地球を救いたいという強い願望を抱いています。2000年に起業したブルーオリジンというスタートアップで、宇宙への植民を視野に再利用可能なロケットも開発しています。

 「地球上には解決すべき問題が非常に多いのに、なぜ宇宙にこれほど多くの投資をするのか?」。2022年10月、バチカン市国のローマ教皇庁を訪れたベゾスは、多くの人が抱いている疑問に対し、明確な答えを示しました。

 「宇宙への投資は、地球の保護に役立つ。ブルーオリジンのモットーは『For the Benefit of the Earth(地球の利益のために)』だ。私たちは故郷を捨てるのではなく、守るために宇宙に行く。エネルギーについて考えてみてほしい。宇宙で太陽は常に輝いており、ほぼ無限の量のエネルギーを集めることができる。エネルギーやその他の資源は、地球に害を与えることなく宇宙で収穫して使用することができる」

 「ブルーオリジンの長期的な目標は、すべての汚染産業を地球から遠ざけることだ。その道のりは長く、私が生きているうちに終わりは見えない。ほかの誰かがそのトーチ(たいまつ)を手に取らなければならない。しかし私は宇宙への道を築くためにできる限りのことをしたい」

 最近のベゾスは、宇宙だけではなく、地球が抱える問題を解決するための慈善活動にも熱心になっています。2020年には、100億ドル(約1兆3000億円)を拠出して、気候変動などの問題に対処するための「ベゾス・アース・ファンド(基金)」を設立すると発表しました。22年10月にベゾスがバチカンを訪れたのは、ベゾス・アース・ファンドによる慈善活動が表彰されたからです。

 「地球は壊れやすいものだ。おそらく見た目よりも壊れやすい」。ベゾスはスピーチでこう強調しました。過去100年間で天然資源の年間使用量は20倍に増加しており、21世紀の終わりまでに1900年の400倍の天然資源とエネルギーを使うという予想もあり、人類が自然界に与える負荷はもはや無視できない、といいます。アポロ8号の宇宙飛行士だったジム・ラヴェルのコメントを引用し、「地球は楽園であり、私たちはそれを守らなければならない」とも述べました。

 ベゾスは地道な慈善活動にも力を入れています。例えば、気候関連などの災害被害者に無料の食事を提供する「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」にも1億ドル(約130億円)を寄付しています。WCKは、ウクライナの戦争被害者のために毎日100万食以上を提供していることでも知られており、同国東部や南部の前線に近いエリアで、ガスや電気が使えず食事をつくることができない家庭も支援しているそうです。

 貧困家庭の教育支援にも熱心で、恵まれない子どもたちに早期教育を提供するために、ベゾスは20億ドル(約2600億円)を投じて「Day One Fund」というファンドも設立しています。このほかにもアフリカにおける熱帯雨林の保護、持続可能な漁業にも強い関心を示しています。

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