天才たちはどんな本を読んでいるのか? テスラのイーロン・マスク、アマゾンのジェフ・ベゾス、マイクロソフトのビル・ゲイツ。世界一の富豪になったイノベーターたちは、実は猛烈な読書家です。日経BPが出版した書籍『天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊』の一部を抜粋し、加筆・再編集してお届けする連載の第9回では、マスクやベゾス、メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグなどの天才的なイノベーターに共通するSF的な思考に迫ります。
テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスクが読んだ本のリストを見ると、SFが非常に多いことに驚かされます。少年時代のマスクは1日に2冊の本を読む“本の虫”で、とりわけSFが大好きでした。アイザック・アシモフ、ロバート・ハインライン、イアン・バンクスなどが著した、さまざまなSFを読んでいます。
SFを愛読してきたことは、マスクに大きな影響を与えています。再利用可能な宇宙ロケットを開発して火星を目指すというマスクの計画は、子どもの頃にSFを読んで想像した世界を自ら実現しようとしているようにも思えます。

アマゾン創業者のジェフ・べゾスもSF好きです。アシモフやハインラインなど、好きな作家の多くはマスクと重なります。フランク・ハーバートの『デューン 砂の惑星』がお気に入りで、「私はSFの大ファンで、この作品を愛している」とベゾスは述べており、バンクスの「『カルチャー』シリーズも大好きだ」と語っています。
『天才読書』で詳細を説明していますが、ベゾスが2000年に宇宙開発ベンチャーのブルーオリジンを起業した背景には、少年時代に心を奪われたSFとベゾス自身が親しいSF作家のニール・スティーヴンスンの存在がありました。
SFテレビドラマの『スタートレック』シリーズもベゾスのお気に入りです。アマゾンのAI(人工知能)スピーカー「アマゾン・エコー」のアイデアは「スタートレックのしゃべるコンピューターだった」とべゾスは述べています。エコーを操作する際には「アレクサ」と話しかけるのが一般的ですが、スタートレックのカーク船長のように「コンピューター」と話しかけても応答するようになっています。
メタ(旧フェイスブック)CEOのマーク・ザッカーバーグもSFが大好きです。実は同社の経営にもSFが大きな影響を与えています。例えば、フェイスブックをメタに社名変更するきっかけとなった「メタバース」という言葉自体がSFに由来しています。
それが『スノウ・クラッシュ』というSFで、作者はベゾスとも親しい前出のスティーヴンスンです。スティーヴンスンは1992年に著したこの作品で、オンライン上の仮想世界としてメタバースを描きました。仮想世界における分身となる「アバター」も登場させており、約30年前にメタバースの概念を生み出していたといえるでしょう。
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