街のコミュニティーを再生させるために、飲食業以外の部分ではどんな取り組みを行っているのでしょうか。
佐藤氏:淡路島では廃校を買わせていただき、子供たちのための無料図書館をつくりました。年に2回その場所で「SAKIA(サキア)祭り」というお祭りをやると、地域の人たちと約束しています。今年の春は1200人が集まり、9月には雨にもかかわらず900人が来てくれました。地元の方も出店してくださっています。
経済的合理性を踏まえた地方創再生
今後は全国の都道府県への展開を狙うのでしょうか。
佐藤氏:47都道府県を目指すという気持ちはありません。もちろんスケールは大切ですが、1番大事なのは収益性です。経済的合理性を踏まえた上で、どうやったら人が住みたいと思うか、幸せになれるのか、それをつくりだすことが僕の思う「食から始める地方創再生」です。
海外進出についてはいかがですか。
佐藤氏:これまで4回試みましたが、全て失敗に終わっています。僕の中では「失われたコミュニティーを再生したい」という意味において、日本か海外かは区別していません。ただ、今は身近な日本からという気持ちです。
今後も「飲食業」という根幹は揺るがないのでしょうか。
佐藤氏:僕は食が1番大事だと思っています。医療も教育も大事ですが、食べないと死にますから。遠くないであろう将来の食料危機に備えて、自社農園で収穫した米のうち今年は250kgを備蓄しました。今後増産していき、10年間で5トンの備蓄を決めています。それだけあれば100名程の従業員を1年間は食べさせられます。日本の食料自給率が非常に低く、行政に頼るのが難しいなら自分たちでやればいいと思っているんです。
淡路島の宿泊施設に太陽光パネルを全面設置するなど、持続可能な開発目標(SDGs)に高いアンテナを持っていますね。
佐藤氏:「地方創再生」のキーとなるのは、食、住、エネルギーだと考えています。生活する上では、成長と循環(サーキュレーション)の両方が必要です。
世の中では成長だけが求められがちですが、地方では食文化を中心に循環的な生き方が実現できると考えています。季節の収穫を祝い、地域の人々が集まって加工し、毎年の祭事を楽しむ。地域コミュニティーが復活することで、日本は絶対にもっと生きやすくなるし、楽しくなるはずです。
(構成:都田ミツコ)
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