中小企業の海外展開を支援できる人材が必要
20年、30年後を見据えた時、信金中金ではどのようなリスキリング(学び直し)が必要だと思いますか?
柴田氏:デジタルの知識は必須でしょう。また、語学力を含めた国際感覚が大事になってきます。信用金庫のお取引先が国内で完結することは少なくなってきており、海外に販路を求めることが一般的になっています。信金中金として、海外展開を支援するためのスキルがさらに重要になってくると思います。
我々は海外に6つの拠点を持っており、実際に香港やシンガポールで物販をしています。信用金庫は非常にローカルな存在ではありますが、いくらでも広げられるネットワークを持っているのです。「海外展開したいけど、信金さんには無理だよね?」と言われることもあるのですが、全く問題ありません。我々としても「信用金庫は地域限定」というイメージを払拭していかなければならないと思っています。
信用金庫の個の力と、総合力を生かす
信用金庫は営業エリアが限定されていますが、取引先がその範囲を超えてビジネスを展開する場合はどう支援するのでしょうか?
柴田氏:信用金庫同士は皆仲良しなのでネットワークを組んでいます。いくつかの信用金庫が集まってそれぞれのお客様を呼んでビジネスフェアを開催したり、エリアを超えた広い範囲で商売の機会を提供したりすることが可能です。それを全国規模に広げた実例もあります。
例えば、東北の信用金庫の地方産品を、沖縄の信用金庫の仲介で売ることも可能です。我々は信用金庫の仲介のアレンジをします。また、信用金庫が自由に商品を登録したり、バイヤーなどと連絡を取り合ったりできる「しんきんコネクト」というビジネスマッチングサービスを提供しています。
全国の信用金庫は、それぞれのケーススタディを共有しているのでしょうか。
柴田氏:我々が地域の信用金庫から「こういうことがやりたいけど事例ありますか?」と相談を受けて調べた上で、「その信用金庫さんに行って話を聞いてみましょう」と紹介します。「こんな苦労があった」「こういうパンフレットを使った」など、皆さん惜しみなく経験を共有してくれます。
2020年からは「しんきんイノベーションハブ」という全国の信用金庫のデータを集積し、活用するための拠点の設置を進めています。全国の信用金庫に情報提供をしてもらい、ビッグデータを活用した営業支援をしていきます。
個性豊かな信用金庫がある中で、歩調を合わせるのが大変な時もあるのでは?
柴田氏:我々の苦労をよくご存じですね(笑)。もちろん我々が「皆でやりましょう」と言っても、「すぐにでもやりたい」ところがあれば「うちは無理だよ」というところもあります。しかし、信用金庫のニーズに応えるのが使命ですから、最初から歩調がそろわずとも先行して取り組みますし、途中から全国的に広げていくこともあります。
これから先、信金中金が目指すべき姿を教えてください。
柴田氏:我々は中長期経営計画の目標として、信用金庫が2030年までに地域で最も信頼される金融機関になることを掲げています。そのためには、各地の信用金庫に、地元のお客様へのきめ細かいサービスに経営資源を使ってもらうことが必要です。そこで、バックヤードを共通化できるような事務作業は我々が引き取らせてもらいます。
それに加えて、全国の信用金庫が、必要に応じて1つの金融機関のような行動ができるようにしていきたいと思っています。絵本『スイミー』の物語のように、それぞれが独立した存在でありながら皆でまとまって魚影を組むこともできるようにしていきたい。「地方の顔」と、「全国で158兆円の規模を持つ金融機関」という2つの面を瞬時に切り替えられるようにしたいと思っています。
そのためには何が必要なのでしょうか。
柴田氏:信用金庫業界が全体で使えるようなエコシステムを確立し、その中で課題解決をしていかなければならないと思います。各信用金庫が独立して取り組みながらも、1つの金融機関のように活動できる、高度な生命体のような存在にしていきたいと思っています。
(構成:都田ミツコ)
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