資源に乏しく、市場は小さい……。そんな離島の宿命から、沖縄県の製造業比率は低い。そんな中、アジアの主要都市との距離の近さに注目し、「流通加工」という新たなビジネスチャンスを見いだしたのが物流大手のヤマトホールディングス(HD)だ。ところが、新型コロナウイルス禍で頼みの綱の貨物専用便が運休に。事業の再構築が求められている。
那覇空港と米軍那覇港湾施設(那覇軍港)に挟まれた場所に、外観からはそこに製造ラインがあるとは気づかない、知られざる“工場”がある。建物に掲げられているのは、見慣れた「クロネコヤマト」のマーク。ここはヤマトHDの沖縄グローバルロジスティクスセンター「サザンゲート」だ。

しかし単なる物流施設ではない。2階フロアの一角にはクリーンルームがあり、防じん服に身を包んだスタッフが製造ラインに立ち、容器のチェックなどを行っている。ここは化粧品のOEM(相手先ブランドによる生産)メーカー、ホシケミカルズ(東京・千代田)の「沖縄工場」。国内工場で製造された化粧品の中身を、海外から輸入した容器に充填。アジア市場に輸出するための最終工程が行われている。
そして4階には、あるメーカーのメンテナンス工場があるという。アジアの工場で稼働している装置に不具合が生じた場合、この施設に搬入して修繕。再び海外へと送り返す役割を担う。
3階フロアには工場ではないが、東芝自動機器システムサービス(川崎市)のパーツセンターがある。もともとはアジア、北米、欧州などに分散して在庫を持っていた部品や消耗品をここ沖縄に集約。世界中に発送する体制を整えている。オーダーに応じてパーツをピッキングするのは、沖縄ヤマト運輸の社員たちだ。

こうした流通の過程で付加価値を付ける「流通加工」の提供などで、サザンゲートのスペースはほぼ満床状態だ。沖縄ヤマト運輸の赤嶺真一社長は「私が社長に就任した2011年に約850人だった社員数は、今は約1500人。そのうち約150人は流通加工に携わっている。新たな雇用を生み出せた」と胸を張る。
ヤマトHDがサザンゲートを開設した背景には、沖縄県の「沖縄国際物流ハブ」という政策がある。
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