沖縄を代表する若手経営者3人が立ち上げたファンド運営会社・SCOM(エスコン、沖縄県浦添市)。貧困問題を解決するために必要なのは、中小企業の賃金を上げることと見定め、経営改善の支援に取り組み始めた。沖縄の経済人の“正装”であるかりゆしウエアを着ない3人は「沖縄だからと甘えてはいけない」と語る。

中小企業を支援するSCOMを立ち上げた(左から)上間喜壽氏、藤本和之氏、比嘉良寛氏(写真:前新直人)
中小企業を支援するSCOMを立ち上げた(左から)上間喜壽氏、藤本和之氏、比嘉良寛氏(写真:前新直人)

 10年で強い中小企業を100社生み出し、3000人の従業員所得を引き上げ、1万人の生活を豊かにする――。そんな壮大なビジョンを掲げるファンド運営会社が沖縄にある。若手経営者3人が2019年10月に立ち上げたSCOM(エスコン、沖縄県浦添市)だ。

 代表を務める藤本和之氏は、実は「ウチナーンチュ」(沖縄の人を指す沖縄の言葉)ではない。大阪出身で、前職の情報通信系商社でコールセンターの立ち上げなどを担当。北海道、東北、中部などさまざまな地方都市で経験を積み、06年に沖縄へと赴任した。そして若者が多い事業環境に魅力を感じて、10年に琉球オフィスサービス(現・ROS、沖縄県浦添市)を起業。企業向けのホームページ制作やパソコンのレンタル事業などを営む。

 本土でビジネス経験を重ねてきた藤本氏にとって不思議だったのは、「なぜ沖縄の中小企業は安い賃金しか支払わないのか」ということ。実際、ROSは平均年収600万円という県内の中小企業としては高い給与水準を実現し優秀な人材を集めている。低い県民所得の背景には、県内での利益が県外・海外資本に流出する「ザル経済」もさることながら、地元企業の経営者にこそ問題があると指摘する。

SCOMの代表を務める藤本和之氏は1974年生まれ。本土でのビジネス経験から「若者が多い沖縄は本来、中小企業にとって恵まれた市場のはず」と話す。児童養護施設卒園者が進学する際、在学中の家賃を全額補助する支援を行っている(写真:前新直人)
SCOMの代表を務める藤本和之氏は1974年生まれ。本土でのビジネス経験から「若者が多い沖縄は本来、中小企業にとって恵まれた市場のはず」と話す。児童養護施設卒園者が進学する際、在学中の家賃を全額補助する支援を行っている(写真:前新直人)

 具体的には2つの課題があるという。1つ目は、経営の能力が低くそもそも高い利益を出せないということ。2つ目は、高い利益を出せても賃金などで人に再投資しない経営者の姿勢だ。「沖縄は1人当たりの県民所得が低いが、実は高所得者の割合は高い」(藤本氏)

 貧困問題を解決するためには、中小企業から変革を起こさなければ。そう考えた藤本氏はエンジェル投資を始めたが、壁にぶち当たった。「自分はナイチャー(県外の人を指す沖縄の言葉)で、知名度もない。1人ではなにもできない」(藤本氏)。そこで声を掛けたのが、上間フードアンドライフ(沖縄県沖縄市)代表の上間喜壽氏と、訪日外国人向けに商品情報を伝えるアプリ「Payke(ペイク)」の創業メンバー・比嘉良寛氏の2人だった。

 上間氏は家業の総菜店「上間弁当天ぷら店」を立て直して沖縄県内のファミリーマートでの販売を実現するなど、ビジネスを急拡大させた若手経営者として県内では有名な存在。比嘉氏も沖縄から全国へと羽ばたいたスタートアップの経営に携わってきた経験を持つ。3人に共通するのは、旧態依然とした沖縄の中小企業を変えたいという思い。ウチナーンチュとナイチャーが意気投合し、SCOMが生まれた。

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