DAOやブロックチェーンの社会実装は緒に就いたばかりだ。法人格の位置づけや税制なども未整備で有望ビジネスの海外流出が起き始めている。日本はWeb3産業の果実を得られるか。制度構築の巧拙が試されている。

 「本来の意味でのWeb3ビジネスへの投資は、現状ではできていない」──。ベンチャーキャピタル(VC)、ANRI(東京・渋谷)の中路隼輔プリンシパルはもどかしさを感じている。出資先のNOT A HOTEL(東京・渋谷)がNFTを活用した1日単位の利用権販売を手掛けるなど、Web3に関連するビジネスに関わってはいるが、NFTの保有や、DAOへの投資の実績はない。

国家戦略なのに投資できない

 PART1で見たように、DAOという新たな組織形態への挑戦は国内でも始まっている。10月3日の岸田文雄首相の所信表明演説でも「Web3サービスの利用拡大に向けた取り組みを進める」と言及され、国家戦略に位置づけられた。それなのにVCが手を出せないとは一体どういうことか。

 実はファンドへの規制(投資事業有限責任組合法)上、投資対象としてトークンが列挙されていないのだ。それだけではない。DAOを巡っては法人格、税制、会計の扱いにも不明確な点もある。

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 まず法人格。国内で立ち上げが相次ぐ現状のDAOは、人々が集まる単なるコミュニティー、サークルにすぎない。プロジェクトの主体としての法人格がない。

 プロジェクトを進めるにあたって、物品の売買契約や拠点の賃貸借契約は中心メンバーが個人としてできるかもしれない。だが例えば、活動に関連して事故が起きたときに問題が生じる。既存の法制度の常識に照らせば、DAOは組合に近いと判断され、参加者全員が上限のない連帯責任を負うことになる。森・浜田松本法律事務所の増島雅和弁護士によると「実際に米国では、DAOが訴えられ、参加メンバーが連帯責任を負うべきだと主張されている」という。プロジェクトの中心メンバーはともかく、気軽に協力しようと参加したようなメンバーにとっては納得しにくい。

 また、メンバーがプロジェクトから抜けるときの処理も論点の一つだ。前述のように組合だと仮定すると、メンバーには持ち分が生じ、脱退時に持ち分の請求権が行使できてしまう。メンバー入れ替えの処理が面倒になり、柔軟な組織運営を目指す当初の理念とは離れてしまう。

 もちろん、アイデアがないわけではない。責任の主体としては合同会社(LLC)の亜種として位置づけることで、無限責任ではなく有限責任にとどめる考え方が可能だ。後者の持ち分に関しては、DAOが割り当てるトークンを、株式会社の株式のように見なす考え方があり得る。既存制度と折り合いがつくよう、中ぶらりんな現状を規定し直す必要がある。

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この記事はシリーズ「Web3の正体 始まった「デジタル独立運動」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。