新規事業創出の専門家である守屋実氏の連載第2回は、新規事業のアイデアの生み出し方について。「事業のアイデアが思いつかない」というお悩みは、企業の“あるある”です。そこで今回は、新規事業の“タネ”を見つけ育てる方法をご紹介します。

「新規事業のアイデアを生み出せません」
僕が「新規事業を生める」という話をすると、必ずといっていいほど返ってくる言葉です。いつも言われるこの言葉に、いつも同じ言葉を返しています。「アイデアを生めないと悩む必要はありません。アイデアはいくらでも転がっています」「どうやってアイデアを絞り磨いていくのか、悩む必要はありません。絞り磨く手順もいくらでも公開されています」という2つの言葉です。
かなり乱暴で強調した表現になりますが、僕は「事業を生むのにクリエイティビティーは不要」と思っています。なぜなら新規事業のアイデアは、手の届くところにいくらでもあるからです。しかし、本業一筋でやってきた人は、新規事業は本業に関係がないので「それをスルーする癖」が付いている。だから「日常的に身の回りに山ほどある新規事業のアイデアを見事にすべてスルーしているだけ」なのです。
そこでまずは、新規事業の“タネ”を可視化する方法の例として、「日常の不」「挑戦者からの学び」「国が示す方針」という3つをお伝えしたいと思います。
(1)日常の不
日常生活の中で、「こうなったらイイのに」「こんなモノがほしいな」と思うこと、ありますよね。例えば、オンライン会議で使うマイクは、なぜ本人の声以外も拾ってしまうのでしょうか。周りの雑音やインターホンの音など、明らかに不要な音まで拾ってしまいます。マイクが音源の方向や距離を認識し、話者の声以外をカットすればいいだけのはずです。コロナ禍になってから、もう長いこと時間が過ぎたので、コロナ禍によって突如として湧いた「不便」や「不足」「不安」はだいぶ解消されてきましたが、それでもwithコロナにおける「日常の不」は、こんなふうに尽きることなく、いつでもどこでもあるはずです。
こうした「日常の不」に気づいた時は、忘れないように書き留めておきましょう。100個や200個、すぐにたまるはずです。
(2)挑戦者からの学び
続いて、「挑戦者からの学び」です。日本では年間2000社のスタートアップが資金調達に成功しています。つまり、その2000社は「投資家に出資したいと思わせる魅力的な事業を手掛けている」ということです。だとしたら、その事業計画は大いに参考となるはずです。
例えば、インターネットで「ピッチ イベント 一覧」と検索すると、1秒もかからずに800万件ほどのコンテンツがヒットします。事業の概要、資金調達の内容、ビジネスモデルの解説や起業家本人によるピッチ動画も無料で見放題です。こうした「挑戦者からの学び」を利用しない手はないと思います。
(3)国が示す方針
「国が示す方針」も大いに参考になります。
例えば、国が示す方針は「経済財政運営と改革の基本方針」にまとまっていて、重点投資先としてGX(グリーントランスフォーメーション)、AI、医療などが、社会課題として子どもや女性のサポート、孤独対策などが挙げられています。他にも内閣府の「規制改革実施計画」には、いつどんな規定緩和が行われるかが事細かに記載されています。
ちなみに、これらは新規参入者にとっては明らかに商売チャンスである一方、既得権益や既得秩序に守られてきたプレーヤーからすると、ゲームのルールが変わるピンチかもしれません。皆さんが既得権益側にいるのであれば、注意を払っておいたほうがよいかもしれません。
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