「高級店の乾杯はシャンパン」の常識を覆す

 乾杯にはビールというパーセプションは、一般的な飲食店ではいまだに根強い。ところが、高級店は異なる。乾杯時に飲まれる酒類カテゴリーは圧倒的にシャンパンが強い。普段はビールを好む人ですら、シャンパンを選んでしまう。これこそ、「ラグジュアリーな空間の乾杯にはシャンパン」というパーセプションに他ならない。乾杯という一見同じオケージョンでも、パーセプションが異なるケースがあるわけだ。

ROCOCO Tokyo WHITEは白ワインのグラスに注いで飲むことを前提としている
ROCOCO Tokyo WHITEは白ワインのグラスに注いで飲むことを前提としている

 シャンパンが地位を確立しているオケージョンに切り込み、高級レストランの乾杯でビールというパーセプションチェンジを起こす。これがROCOCOのマーケティング戦略だ。こうした戦略を実現するべく、開発には1年半がかけられた。フレンチや懐石などの繊細な料理に合うように、富士山の伏流水を使用しフルーティーで上品な味わいを追求。ボトルデザインや飲むスタイルにもこだわり、白ワインのグラスに注いで飲むことを前提としている。

 コンビニエンスストアやスーパーなどの小売りを介した販売をいっさい行わず、流通チャネルはミシュランの星付きレストランなどの高級店に限定した。明確な狙いと徹底した商品開発が奏功し、レストランオーナー、シェフやソムリエの絶大な支持を得て、メゾン・ロココは順調に事業を拡大させている。発売から1年で、東京都内にあるミシュランの星付きレストランの約半数にROCOCOが導入された。

 重要なことは、メゾン・ロココはキリンビールやアサヒビールなどのビール大手に正面から戦いを挑んでいるのではないという点。ビールカテゴリーの消費量は年々減っており、18年の時点で14年連続最低を記録した。

 一方、シャンパンの日本向け輸出量は増え続けており、17年以降のシャンパンの日本向け輸出量は世界第3位を維持している。高級店での乾杯のパーセプションを変化させて、ビールでの乾杯を根付かせることがメゾン・ロココの戦略なのだ。特定のオケージョンと商品カテゴリーの関係に着目し、そのパーセプションを変えることで新たな市場創造を図る。視野を広げて見ることで、パーセプションチェンジがもたらす可能性も広がる。

 モノと情報があふれる時代では、どれだけ便益のある商品・サービスを開発し、テレビCMなどで認知度を高めても、好ましいパーセプション(認識)がなければ購入には至らない。「みんなが知っている」の先にある、「みんなにどう思われているか」が重要な時代です。本書にはサンリオ、資生堂、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、森永製菓、ワークマンといった大手企業から、名刺管理サービスのSansan、AI(人工知能)教材のatama plusといったスタートアップまで、パーセプションのコントロールで売り上げ増加などにつなげた15社を超える事例を収録。さまざまな事例を基に、5段階でパーセプションを有効活用する方法をやさしく解説する。

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この記事はシリーズ「次世代マーケティングの新発想「パーセプション」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。