新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は、企業のサプライチェーンを分断した。部品や原材料の調達がストップし、事業を停止せざるを得ない企業が相次いだのは記憶に新しい。こうした混乱期に指針となるのがBCP(事業継続計画)だ。日本企業のBCPにはどのような課題があるのか。KPMGコンサルティングで企業のBCP策定を支援する土谷豪アソシエイトパートナーに聞いた。

新型コロナウイルス禍のロックダウン(都市封鎖)で中国や東南アジアの工場が停止し、日本企業では部品の調達が困難になるケースがありました。そもそも日本企業はこれまでBCPにどのように取り組んできたのでしょうか。
土谷氏:日本企業がBCPに注力するようになった大きなきっかけが2011年の東日本大震災です。海外のBCPと比較しても、地震などの災害対応に重きを置く内容となっています。工場などが地震の被害に遭遇し、かつ台風の襲来にも備えるなど、複合災害を想定した骨組みである場合が多い。最初の数日間でどのように社員の安全を確保するかといった対応が練られていました。
ただ、こうした災害対応のBCPは長くとも1カ月程度の短期間を想定しています。新型コロナのように徐々に影響が拡大するトラブルには向きませんでした。感染拡大を防ぐためにあえて業務を止めるといった対応が必要で、経営的な意思決定が求められる点が、これまでのBCPと異なります。全世界で同時に起こったのも対応を難しくしました。
日本におけるBCPの意識は決して低くなく、むしろ世界的に見ても高いと思います。コロナ禍前の19年時点で日本は301社が国際標準化機構(ISO)の規格を取得しており、インド、英国、米国に続いて世界で4位にありました。ISOを取得せずにBCPを策定している日本企業ももちろんあります。やはり地震が多いことから、災害対応に特化したBCPになっていたのが課題でした。
新型コロナに対抗するにはどのような視点が必要でしょうか。
土谷氏:まずは既存のBCPの課題を洗い出すことです。そもそも日本での対応だけに焦点を当てた内容になっているかもしれません。サプライチェーンリスクを洗い出し、生産体制の見直しや調達先の国内回帰など、最適化を検討するところまで踏み込むべきです。
社員がそれぞれ別の場所にいても情報共有できる仕組みをつくることも重要です。リモートワークが常態化してきた中で、どのような問題が起こっているか可視化するツールがあれば対応できます。
中長期的な対応としては、新型コロナの影響を受けやすいフロービジネスと、ストックビジネスの割合を見直すといった構造改革も必要でしょう。また、有事のコミュニケーションツールの導入やスマートファクトリー化の徹底といった業務のデジタル化も進めるべきです。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り772文字 / 全文1936文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「コロナ「共生」時代に生きる」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?