米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)が最先端ロボットの開発拠点を初めて公開した。米ボストンにある「BOS27」と呼ばれる施設だ。所狭しとロボットの実証実験が繰り返される中、同社は最先端ロボットの実機を初公開。幹部は「ここまで来るのに50年かかった」と興奮気味に語った。1万人ともされる人員削減に加え、「工場での負傷事故発生率が高い」という批判も──。人と協調するロボットは、激しくなる風当たりをかわせるか。

 施設の内部は壮観だった。コンクリート打ち放しの空間にカラフルな多数のロボットが動き回り、ある場所ではロボットアームが、ある場所では搬送ロボットが実証試験を繰り返していた。モーターとアクチュエーターが動く音が各所から聞こえる。大空間が金網フェンスで区切られ、その中を縦横無尽に動く様は、さながらロボットのショーケースである。

 米ボストン中心部から西に車で約1時間。緑が深くしげる郊外に巨大な施設が見えてきた。延べ面積は約3万2000平方メートルで、工場を思わせる無機質な外装材、エントランスには大きく「Amazon」の文字。ここはアマゾンのイノベーション施設「BOS27」だ。2021年10月に新設し、主に物流ロボットを研究している。

BOS27の内観。物流拠点ではなく実験拠点。ロボットの実証試験が至る所で行われていた
BOS27の内観。物流拠点ではなく実験拠点。ロボットの実証試験が至る所で行われていた

 アマゾンはこれまで、この研究施設を非公開としてきた。米国時間22年11月10日、同社は報道陣に対して初めて公開取材会を実施。ベールに包まれていたアマゾンの“秘密基地”で、どんな実験が行われていたのか。

 あるエリアでは、既にアマゾンが実用化しているロボット「Robin(ロビン)」を使った試験が進んでいた。同社が2021年4月に発表したロビンは、ベルトコンベヤーで運ばれてくる1つひとつの小包を識別してつかみ、パレットまで移動することができる。この日はつかんだ小包を自動搬送ロボットに移動させ、その搬送ロボットが荷物を指定された場所まで運ぶという試験が繰り返し実施されていた。

既にアマゾンが実用化しているロボット「Robin(ロビン)」による実験の様子
既にアマゾンが実用化しているロボット「Robin(ロビン)」による実験の様子

新ロボット「スパロー」の実力とは

 アマゾンは研究施設を公開した11月10日、2種の新型ロボットを初公開した。まずはそれらのロボットを解説しよう。

 この日、初めて発表したのが、新型物流ロボット「Sparrow(スパロー)」だ。実際に稼働している様子を報道陣に公開した。スパローはアマゾンで初となる、梱包前の個別商品を扱うことのできるロボット。アームだけでなく、認識などを担うシステムも含めた全体の名称である。アマゾンは12年にロボットメーカーの米Kiva Systems(キバシステムズ)を買収し、物流ロボットに注力してきた。スパローは10年間の集大成の1つだ。

22年11月10日にアマゾンは新ロボット「Sparrow」を発表した

 上の動画を見てほしい。黄色のラックに入った商品をロボットが認識し、アームでつかんで手前にある黒い別のラックに移している。黄色のラックには複数の異なる商品が入っており、ロボットは「どの商品であるか」を個別に認識している。アームの先端にはバキューム式のアタッチメントが装着されており、吸引力で商品をつかんでいる様子が分かる。

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