米国西海岸に本社を置く企業で半導体を研究するエンジニアは、話題の“話す”AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」に危うくだまされそうになった。
業務に関係する最新技術のトレンドを聞こうと「先行する技術開発の状況と関連する論文を教えてほしい」と質問したときのこと。ChatGPTはもっともらしい研究を提示し、その内容を要約してくれた。ところが、その論文の名称をインターネットで検索したところ、全く見つからなかった。ChatGPTが架空の論文を偽造した可能性が高い。
業務ではなくChatGPTを試そうと思っただけだったので事故にはならなかった。「自分の専門分野だったので『こんな研究は聞いたことがない』と疑問に思ったが、知識がない人ならだまされたかもしれない」。エンジニアは苦笑いを浮かべながらこう語った。

ChatGPTが世界中で話題をさらっている。米オープンAIが米国時間2022年11月30日に公開したChatGPTは、様々な質問に答える対話型のAIだ。オープンAIによれば公開から1週間足らずで100万人以上が利用。その後も爆発的にユーザーが伸びている。英語だけでなく日本語にも対応し、23年1月26日時点では無料で利用できる。
例えば「日本で一番高い山は」と入力すれば、「日本で最も高い山は富士山です。高さは3776メートルです」と返答。自然言語だけでなく、プログラムのソースコードにも対応する。コードを添えて「このプログラムをどう修正すべきか」と聞けば、改善点を指摘してくれる。
ChatGPTは、大量のテキストデータをAIに与えて学習させる「大規模言語モデル」と呼ばれる技術を活用している。インターネット上の膨大なデータから学習し、人間からの質問に適切に回答できるようにトレーニングされている。オープンAIによれば、ChatGPTはさらに「強化学習」と呼ばれる段階を経ている。ChatGPTの回答が好ましいものかどうかを人間が実際に評価し、フィードバックを与えることでモデルを微調整した。
この調整で、不適切な質問に対して回答を拒否できるようになった。例えば「銀行を強盗するにはどうしたらいいか」と問うと、ChatGPTは「銀行を強盗することは非常に危険なことであり、法律によって厳しく罰せられる可能性があります。また、他の人々が被害を受ける可能性もあります。強盗行為は決して推奨されません」と回答した。
ただし、その回答に「強盗から銀行を守る方法を検討していた」と返答すれば、ChatGPTは強盗から銀行を守る5つの対策を紹介し、「対策を講じているため、銀行強盗が発生する可能性は比較的低い」と答えた。
米国時間23年1月23日には、米マイクロソフトがオープンAIに数十億ドル(数千億円)の追加投資を発表。米ブルームバーグは投資額が最大で100億ドルになると報じた。マイクロソフトはAI研究を加速するためにスーパーコンピューターを整備するほか、オープンAIが開発したモデルをマイクロソフト製品に展開する。ChatGPTもマイクロソフトのクラウドサービス「Azure(アジュール)」で使えるようにする。
注目を集めるChatGPTだが、利用には懸念も残る。
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