いざ経営を数値で可視化しようとしても、手掛かりとなるKPI(重要評価指標)の設定でつまずく企業は少なくない。学生時代にGunosyを起業し、今は業務SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)「バクラク」シリーズを主に手掛けるLayerX(レイヤーエックス、東京・中央)を立ち上げた福島良典CEO(最高経営責任者)にKPI経営の「本質」を聞いた。

福島 良典(ふくしま・よしのり)氏 LayerX CEO
福島 良典(ふくしま・よしのり)氏 LayerX CEO
東京大学大学院工学系研究科修了。大学時代の専攻はコンピューターサイエンス、機械学習。2012年大学院在学中にGunosy(グノシー)を創業。15年、東証マザーズ上場。後に東証1部に市場変更。18年にLayerXの代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任した。(写真:的野 弘路)

奇抜なKPIは不要、シンプルさが重要

福島さんは「ソフトウエアによるKPI経営」を指針として掲げ、実行されています。連続起業家としても、多くのベンチャー企業の経営者から相談を受けるそうですね。

福島良典氏(以下、福島氏):よく「どんなKPIを設定すればいいですか」と質問をされます。KPIはベーシックなものを設定します。「どんなKPIを設定するか」よりも「どれくらいの深さ・細かさでKPIをコントロールしているか」が大事かなと思っています。

 世の中のビジネスは、基本的には最終的に売り上げとコストで決まります。大体の企業はその売り上げの管理で苦しんでいる。つまり重要なKPIはどんな企業にとっても売り上げや利益になるはずです。そして売り上げは結局、顧客数×単価で決まりますから、KPIは顧客数と単価に紐づくものが基本です。これ以外に探してもあまりよいKPI設定にはならないでしょう。むしろ、売り上げの見立ての精度をどう上げるか、日々の活動に即した数字の管理になっているかが、KPIを深く・細かくしていくという基本原則ではないでしょうか。

 ですから、当社では奇抜なKPIを設定していません。見ている数字自体はとてもシンプルです。例えばユーザーの継続率とか単価、営業の生産性や広告投資のROIとか、ベーシックなものを見ています。

 ただ、管理の仕方は若干特殊で、日々の業務に合うように設計しています。社内で「ファネルとコホートによる管理」と呼んでいて、ファネルはユーザーの状態、コホートは時間軸のことを指します。まず会社組織は一般的に、ユーザーの状態で別れています。例えば、まだ顧客になっていない層に対してはマーケティングチームが認知を取ろうとし、商談段階に入ればセールスチームが扱います。実際に利用を始めれば対応はカスタマーサクセスチームに移ります。加えて、収益は今月や来月といった時間で区切った目標で管理します。こうすると、ファネルとコホートは、KPIとして管理しやすくて汎用性がとても高いと思っています。

 KPI経営というと難しく考えがちですが、シンプルにいえば、例えば「来月・次の四半期・来年のあなたの会社の売り上げがいくらになりますか」「それって今持っているデータから予測できますか」「実際はどうでしたか」「そのズレはどこから生まれていますか」などをきちんと細かく見ることです。

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