AIはどれほど雇用を奪ったのか(写真=PIXTA)
AIはどれほど雇用を奪ったのか(写真=PIXTA)

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人工知能(AI)は現代、最も重要な新技術だが、企業が組織全体に効果的に展開するにはいまだにさまざまな課題がある。雇用を奪うとの懸念もなくならないが、米バブソン大学のトーマス・H・ダベンポート教授はAIの長期的な可能性を現実的かつポジティブにとらえ、AI活用戦略のためのヒントを提示する。

 企業がAIから競争優位を築くためには、AI技術を広く積極的に導入する必要があろう。ただし企業は、事前にAI技術の導入計画を練らなかったことにより失敗することがある。例えば、技術を統合して大規模な利益を実現するため、必要なプロセスの変更の困難さや複雑さを十分に理解せずに、試験運用や実証実験に踏み切ってしまう場合もある。AI技術の本格的な導入に踏み切る企業が少ないのにもそれなりの理由がある。

大企業はAI導入にどの程度積極的?

 理由の1つは、技術が比較的、未熟だからだ。例えば、チャットボットやインテリジェントエージェントは日々進歩しているが、顧客にとってはまだ使いづらく、多くの企業は顧客にそうしたサービスを強要するのをちゅうちょしている。その代わり、企業は内部で従業員にこれらのアプリケーションを使うよう求めたり、顧客が簡単にサービスを退会できるようにしたりしている。

 また、AIが既存のプロセスの変更や新しい従業員のスキルを必要とする場合、企業は変更計画を策定しなければならないので、これも障壁になる。ほとんどのAIシステムは、依然として人とのやり取りが必要であり、人に新しいタスクやスキルを教えるには時間とコストがかかる。調査においても、AIと人が協働するための効果的なトレーニングが十分でないと考える従業員が多い。

 AIを最大限に活用するためには、生産情報システムやアーキテクチャーとの連動も必要である。2017年の米デロイトの調査では、AIの導入を成功させるための障害の第1位は、「AI導入プロジェクトを既存のプロセスやシステムと統合するのが難しい」ということだった。

 少量のロボットであれば非常に簡単にセットアップできるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)システムも、量が増えてくるとアーキテクチャー上の課題を発生させることがある。また、RPAが生産システムに組み込まれるため、RPAが生産システムの変更に敏感に反応し、再プログラミングが必要になることもある。

 水面下で進行中のAIプロジェクトの数は、その企業のAI活用度合いの指標となる。もちろん、AIプロジェクトの規模や範囲はさまざまであり、1つのAIプロジェクトで複数の基盤AIが必要となることもある。AIが成熟し、企業への統合が進むにつれて、AI活用によってビジネスの変革がどの程度成功したかを総合的に判断することが、企業のAI活用度合いをより的確に示す指標となるかもしれない。

 AIプロジェクトを数える方法はいくつかあるため、企業はその正確な数を把握していないことも多い。しかし、企業幹部へのインタビュー調査からは次のようなことが判明した。

●米投資顧問会社バンガードにおけるAIプロジェクトの総数は少なく、一桁台である。AIを搭載した製品・サービスとしては、同社の「パーソナルアドバイザーサービス」に組み込まれた「ロボアドバイザー」が成功している。

●米医療機関インターマウンテン・ヘルスケアは、AIに対し非常に積極的な企業であり、数十のプロジェクトを有している。

●米ファイザーは、医薬品・ライフサイエンス事業において150を超えるAIプロジェクトを遂行している。

●米大手銀行キャピタルワンは、銀行業務にアナリティクスを適用したパイオニアであり、約1000のAIプロジェクトを有している。

●米グーグル/アルファベットは、2016年に2700以上の機械学習プロジェクトを有していたが、現在ではそのプロジェクト数は数え切れないほどに増大した。

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