
企業の様々なランキングについて、気になる経営者は多いだろう。米ダートマス大学のポール・アルジェンティ教授とライアン・カルスビーク教授は進化生物学と企業の評判研究を組み合わせた分析で、企業の成功には、ランキングそのものよりもランキングに影響する特徴を科学的な手法で掘り下げるべきだと指摘する。
進化生物学の知見はこれまでも経営学に用いられてきたが、概念を分析に援用するアプローチが主だった。本稿は、進化生物学の解析方法を経営に取り入れる必要性・有用性を指摘している点で、経営学・企業経営に新たな知見を提供してくれる。
私たちは長年、ブランドや評判といった無形資産は、企業にとって最も価値ある財産であると認識してきた。ところが企業はそれらの資産を分析する際、企業の評判の土台となる具体的な要素ではなく、米誌フォーチュンやブランドコンサルティング会社の米インターブランド、米調査会社ハリスポールのブランド評価ランキングといった、外部のランキングを通して測定しようとしてきた。
ランキングは価値あるベンチマークをもたらしてくれるものの、これらは過去の出来事に基づいたものであり、将来の評判に影響をもたらす指針を示すわけではない。代わりに、(ランキングを左右する)具体的な要因に注目すれば、競争力のある企業になるために必要な属性を理解し、ランキングの結果がどのような要因からもたらされているのかを明らかにすることができる。
実はこのプロセスにおいて、「進化生物学」が役に立つ。
進化生物学は、つまるところ「最適化」の研究だ。進化生物学者は、ある個体がほかよりも優れた競争力を持つために必要な属性群を理解しようとする。競争力の高い個体を生み出す特性は、時間と環境により変化するため、種の競争力を維持するには、環境の変化に合わせて進化を続けなければならない。
進化的変化が示唆すること
『進化論』の提唱者であるダーウィンの研究対象だったガラパゴス島に住む鳥、フィンチを見てみよう。乾燥した島々では、フィンチの唯一の食料は固い木の実だったため、彼らは丈夫で力強いくちばしを持つように進化した。一方、雨が多い島々のフィンチは、繊細で柔らかい種子をうまく引き出せるように、長くて細いくちばしを持つように進化したのだ。
いずれのフィンチも、もう一方の環境のなかでは食料を得られず、生き残ることができない。特定の環境下で最も長生きしている鳥は、(生きるうえで)成功したくちばしの遺伝子を子孫に伝える可能性が高い。この「変異・選択・遺伝」というプロセスが、進化的変化の経路を決定する。
企業も生物と同じように、生存や繁栄のために進化する必要がある。生物と同じように、企業にとっても環境は重大な要素だ。最も競争力が高く、成功する企業を生み出す属性の組み合わせを決めるのは、競争環境なのだ。
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