ただ待つだけでなく、戦略的に幸運をつかみにいっているか?(写真=PIXTA)
ただ待つだけでなく、戦略的に幸運をつかみにいっているか?(写真=PIXTA)

人生はままならぬ。キャリアや進路は、思いがけないことで決まるものだ。「シナリオプランニング」などで知られる米ペンシルベニア大学ウォートン校のポール・シューメイカー教授が、ビジネスや人生で有利になりやすくなる、8つのアプローチを考察した。この戦略ロードマップを使いこなせば、読者が幸運の女神のほほ笑みを見かける回数が増え、統計的に優位な「いざ」という勝負時に、思い切ってリスクを取ることができるようになるに違いない。この、確率論的な考え方を使った「科学的幸運管理法」を、3回にわたり紹介する。

 英オックスフォード大学編さんの辞書は「luck(運)」という単語を、「自身の行動によってではなく、偶然によってもたらされたと思われる成功や失敗」と定義している(1)。これは、ランダムな要因が支配的な役割を果たした結果に焦点を当てた定義である。

 運は確かに偶然の産物なのだが、統計学をはじめ意思決定論、経済学、物理学、生物学(突然変異)など幅広い分野で研究テーマとなっている。多くの人は、運を決定論や統制、戦略的意図の対極に捉える。だが、偶然が決め手になる状況に対して我々が影響を与えられることも多い。我々の力と運の力は、互いにつながっているからだ。

 芸術、科学、ビジネスなどの創造的な分野では、セレンディピティー(意図せずして有益な出来事や物事などを見つけること)は、単に運だけでなく、間接的な仕組みによりもたらされることもある(2)。本論で筆者がお勧めする内容は、意思決定論、戦略論、そしてイノベーションの学術研究を反映している。その一部には筆者自身の研究も含まれる。

 また筆者が起業や経営に携わり、世界の数多くの組織に助言してきた経験にも基づいている。長い間、ビジネスにおいて「なぜあの人や会社は運が良さそうに見えるのか」に関心を持ち、その幸運のいかほどが意図的な仕組みによってもたらされたものなのか、常に知りたいと思ってきた。

 幸運を期待しただ待つのではなく、幸運がより多く訪れる環境を整えよう。

「ダム・ラック」か、「スマート・ラック」か

 読者の最初のチャレンジは、運に対する見方を変え、運は偶然の産物以上のものだと理解することからだ。確かに運は確率に左右されるが、自分に有利になるよう、できることがある。ベストを尽くして良いことが起こるのを待つのではなく(ダム・ラック)、良いことがより多く起こるように自分の環境を整える(スマート・ラック)のだ。

 人生の成功がどの程度まで運やスキルによるのかは見方次第で、人や文化、言語によっても異なるだろう。しかし、運に対する考え方がどうであれ、幸運の女神がほほ笑む確率を高める戦略はある。国の宝くじ(3) やルーレットのような本当に運任せのばくちではうまくいかないかもしれないが、スキルとチャンスが複雑に絡み合い、部分的にコントロール可能な場合は、スマート・ラックを試してみよう。

 ほとんどのビジネスチャンスは、運と備えが不明瞭に交差する場所にある。だから、惑星が一直線に並ぶ瞬間に常に備えていなければならない。狙い澄ました備えがなければ、多くの偶然のチャンスは、本人すら気づかないうちに過ぎ去ってしまうだろう。――ブルガリアのボクサー、セラフィム・トドロフ氏がそうであったように。

次ページ 一瞬の判断で一生の悔いを残さないために