アジャイルな「アダプティブ空間」をつくろう(写真=PIXTA)
アジャイルな「アダプティブ空間」をつくろう(写真=PIXTA)

組織はどうすればアジリティー(俊敏さ)を高められるのだろうか? マイケル・J・アリーナ氏は、アジリティーを「日々進歩するデジタル技術をいち早くキャッチアップし組織に還元する能力」と定義し、「人とのつながり」こそが、アジリティーの鍵になると説く。本稿はその前編。

 今日、組織が直面する最大の課題の一つが、「アジャイル(俊敏)であること」、つまりアジリティーの実現である。アジリティーを高めるという目標を達成するために、組織のリーダーは、アイデア、情報、インサイトの行き来を促進する、人と人との「つながり」の力を、より深く理解する必要がある。

 米ペンシルベニア大学のマイケル・アリーナ教授は、4次元的なつながり、すなわち発見、開発、普及、かく乱を促進する「関係的な構造」を構築することで、積極的な破壊に必要な、新しい革新的なアイデアや概念を生み出すことができると述べている。

組織はどうすればアジャイルになれるか

 破壊的なデジタル技術の進化に直面する今日の組織にとって、アジャイルであることは極めて重要である。最近のある調査によると、経営幹部の87%が、新たなデジタル技術が自分たちの業界を大きくまたは中程度に破壊すると考えている。

 しかしそれらの経営者のうち、自社がデジタル技術に十分な備えをしていると考えているのはわずか44%にすぎない。この懸念と準備との間の溝は、驚くべきものである。

 ほとんどの組織は、目の前の出来事への対処に限りなく没頭しているように見える。業務効率が最優先される世界で成長してきた組織は、活動を管理し、調整し、統制するように設計されている。このような組織では、新しいアイデアが生まれてもすぐに抑圧されたり脇に追いやられたりして、業務上「今すぐやらないといけないこと」に焦点が当てられることになる。

 このような組織は、長期的な適応を犠牲にして短期的なオペレーションを遂行してきた。その結果、迅速なデジタル変革に不可欠なアイデアが聞き入れられない、抑圧的な環境ができてしまうことになる。

 しかし、ここで朗報がある。このような制約下でも、人々が進んで発言する条件があるのだ。それは、一緒に働く人たちを心から信頼している場合である。親密でオープンな関係があれば、人々はより積極的にアイデアを共有し、議論し、発展させることができるのだ。

アダプティブ空間――「ソーシャルなつながり」の促進

 アジリティーは、構造というより、交流によるものだと分かる。オープンな議論が阻害されると、企業のアジリティーも阻害される。この創造的破壊の時代にあって、組織のリアルタイムな適応を可能にするのは、社会資本(ソーシャルキャピタル)なのである。

 したがってリーダーは、信頼して関わり合える環境を育て、その環境の中で、アイデア、情報、インサイトの行き来によって、人と人が交流する力を理解しなければならない 。

 ここで「アダプティブ空間(訳者注:技術変化に適応するための空間)」の出番だ。リーダーは、適応性を育み維持するために必要なスペースを創造し、関与させ、保護することができる。アダプティブ空間とは、人々が自由にアイデアを探求し、交換し、議論するために必要な、関係的、感情的、そして時には物理的な空間であると考えられる。

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