「卓越したい」という内発的動機をどう保つか(写真=PIXTA)
「卓越したい」という内発的動機をどう保つか(写真=PIXTA)

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 業績給に反対する意見の中で最も多いのは、アルフィー・コーン氏の論文の主題や社会心理学者らのコンセンサスによると、業績給が外発的動機づけを高め、内発的動機づけを弱めてしまうというものである。

内発的動機づけの弱体化

 インセンティブを重視すると、人々は自律性の喪失を感じるようになる。インセンティブ・システムによる外発的動機づけを前にして、人々はいわゆる「熟達志向」 、つまり個人が卓越性を追求するうえで原動力となる内発的動機づけを失いがちになるのだ。

 組織がこうした作用を理解し回避するためには、外発的動機づけと内発的な動機づけの違いを理解することが重要である。外発的動機づけとは、金銭、名声、成績、称賛などの外発的報酬によって引き起こされる行動を指す。

 一方、内発的動機づけは内的な動機に由来する。内発的に動機づけられた人は何かの行動を起こす際、その中に個人的な楽しみや満足を見つけることができる。この場合、行動そのものが報酬をもたらすので、行動に対する動機づけは外発的報酬に依存することがない。

業績給が内発的動機づけを弱める理由

 業績給がいかに内発的動機づけを損なうかを示す根拠は、心理学教授のエドワード・L・デシ氏とリチャード・M・ライアン氏による一連の研究成果から見いだすことができる。これらの研究は目に見える報酬、特に金銭的な報酬が、被験者の内発的動機づけを弱める傾向があることを発見した。

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