一般社団法人ベンチャー型事業承継のメンバーは、毎日いろいろなアトツギに接している。「できるアトツギに共通していることとは?」「アトツギを取り巻く環境はどうあるべきか」などをじっくり話し合った。
私が代表理事を務める一般社団法人ベンチャー型事業承継は、若いスタッフが一緒に働いています。さまざまなキャリアを持つスタッフがいて、日常的にアトツギと触れています。
今回は私とスタッフが「できるアトツギに共通していること」「アトツギを取り巻く環境」などをテーマに話しました。参加したのは、家業の和紙問屋を経てベンチャー型事業承継に加わった大上博行事務局長と、都市銀行から3月までベンチャー型事業承継に出向中の大本将太広報ブランディングマネージャーです。

山野:アトツギは世の中であまり実態が知られていない気がします。ベンチャー型事業承継が運営するオンラインコミュニティー「アトツギファースト」に参加するアトツギにどんな印象を持っていますか。
大上:自分の取り組みを発信するアウトプットフェーズの人と他のアトツギの話に耳を傾けるインプットフェーズの人に二極化していると思います。
アウトプットフェーズの場合、全面的に権限が委譲されてなくても、広報とか採用とか、特定のテーマだけでも任されている人は、そこから小さな実績をつくって社内に認めてもらい、少しずつ権限を広げています。一方、同じアトツギでも一般の社員と同じように、やりたいことがあってもまだ任せてもらえず予算も人も動かせない場合、やはりインプットフェーズになりがちです。
山野:アウトプットフェーズの場合、「父親が決算書を見せてくれないから週末に忍び込んだ」「株の話は墓参りのときにするのが効果的」などアトツギとしての実感がこもった話が多いですね。インプットフェーズの人は情報収集にとどまっていますが、アトツギに起こる課題は似通っていますから「予習しておく」感じなのかもしれません。
大本:インプットフェーズの人は他のアトツギの体験を聞きながら「自分だったらこうする」とシミュレーションしている面があると思います。今はインプットの人もいつかは経営者になりますし、他からのインプットが多い分、その後の意思決定やアクションのスピードが速い気がします。
今はビジネスパーソンも「どんなキャリアを築きたいのか」と問われる時代になっています。そんな中でアトツギという選択はキャリアの1つとして前向きに捉える傾向が強まっていると思います。
活躍するアトツギを見て共通することがあります。それは自分の個性を生かしていることです。「先代のような営業力や強いリーダーシップはないけれど、組織づくりは得意」というように、自分が得意なことを利用しながら家業というフィールドで活躍の場を広げているアトツギが多いと思います。
山野:時代の変化が大きく、60代くらいの経営者が次の世代にどんどん任せる流れも出てきています。
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