(前回から読む→「娘は悩む。『支配』する母をどう介護に持ち込むか」)

『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』
『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』

編集Y:前回は、介護業界についての報道でネガティブ面が強調されてきたことで、「そんな環境で働いている人に、能力やモチベーションを期待できるのか」という、介護制度そのもの、サービスそのものへの不信感を持たれる状況まで行っちゃっている、というMさんのご指摘をいただきました。

Mさん:はい、いち働く女性としては、「現場で働く人たちは疲弊している、不安だから、自分のお金でなんとかしないと」くらいに思っていました。

編集Y:業界の賃金のお話は前回川内さんに説明していただきました。介護保険制度がこの先このまま維持できるのか、という問題はここでは措かせていただくとして、現状、その制度でサービスを受けた実感としては「安い! ここまでやってもらえるのか、これなら要介護の親がいても普通に働ける」でした。

Mさん:『親不孝介護』のYさんの体験記からは、そういう印象を受けますよね。

編集Y:だからなのか「こんなの、珍しい例だろう」みたいなことも言われます。

Mさん:それはみんなの、介護制度への期待値がめちゃくちゃ低いからだと思うんですよね。

編集Y:期待が低いから、普通のことでも「運がいい」くらいに見えるのか。

Mさん:いやでも、恵まれていたと思いますよ。

編集Y:そりゃ、松浦晋也さん(サイエンスライター)のお母様の介護本を編集して、「介護は初動が大事」と気付かされ、本のご縁で川内さんと会って、「親不孝介護」の考え方をレクチャーしてもらいながら親の介護スタート、なんて、確かに運がいいです。なので、少しでも多くの人にこの考え方を知ってもらいたくて書籍にしたわけで。

「偏差値」が高い人だったからうまくいった?

Mさん:それもありますが、そもそも、Yさんの息子偏差値が高くて、お母様の被介護偏差値が高いから、こうなったんじゃないですか、と。

編集Y:最初にそんなこと言ってましたよね。偏差値、高いですかね。

Mさん:Yさんが70で、お母様の被介護偏差値は78くらいあると思います。

編集Y:東大も楽勝。

Mさん:やっぱり、やる人次第、の面はあるんじゃないですか?

編集Y:ない、とはさすがに言えないかもしれませんが……。

Mさん:「優秀な人にはいい結果が付いてくるよね、いいないいな」みたいな、そんな感じですね。

編集Y:いや、さっさと動くことができたからこうなったんだよ、というのを伝えたくて書いたんですけど。

Mさん:いや、でもさっさと動けないじゃないですか、みんな。

編集Y:動けないですよね、私も動けなくて、でもこうで、こうでと一生懸命にですね。

Mさん:あとYさんがお母様を入れた施設の金額が、また驚きの安さじゃないですか。

編集Y:そうですね。私もびっくりしました。

Mさん:何でなんですか。何であんなに安いんですか。

編集Y:まあ、1000万円以上とか、そういう現実離れしたところは最初から見ていませんが、でも比較した中では、やっぱり入居金が100万円以上とか、いろいろありましたよ。東京よりは安いけれど、地方だから新潟だから安い、というわけじゃない。

Mさん:そうなんですか。

川内:それでいうと、今の話もそうなんですけど、老人ホームもそうなんですけど、高いから良いかというと、全然そんなことないです。

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