(前回から読む→「『勝ち組夫』の介護への暴走、妻はどう止める?」)
編集Y:私の知人、子育て共働き中のMさんに、女性から見た『親不孝介護』の感想を伺っています。前回は、『親不孝介護』は勝ち組の鼻持ちならないビジネスパーソンのための本である、だから、仕事もまずまず、親との関係も良好な夫を持つ妻にとってはたいへん有益な本である、という、なんというか、素直に喜んでいいのか分からないご講評を賜りました。
Mさん:優秀で、よくできた息子である夫ほど、介護に暴走して家庭を壊しかねない。そんな夫にブレーキをかけるために、実用性が高く、日経ブランドで会社員の夫も読んでくれそうな、いい本だと思います(笑)。夫の親の介護が始まる前に、妻が読んでおくととても役立つと思いました。我が家も含めて。
川内:ありがとうございます。
編集Y:ありがとうございます。で、Mさんに引き続きお聞きしたいのですが、この本はMさんと、Mさんのお母様についてはいかがでしょう。役に立ちそうでしょうか。
娘は、できるだけ母親と距離を置きたいと思う
Mさん:本でも触れられていましたが、「母と娘」と「母と息子」とでは、母親との距離感に違いがあるんじゃないでしょうか。たぶん娘は、正確には「私は」ですけれど、息子ほどお母さんをそんなに好きじゃないと思います。何でしたっけ、「安全基地」でしたっけ?
川内:はい。心理学的に子どもが親に対して持っている「最後の安全基地」という意識ですね。
編集Y:それが老化で損なわれることで、子どもは「自分の最後のよりどころが失われていく」という不安や怒りを、親に対して覚えてしまう。距離が近いと、その怒りを抑えきれなくなり、介護が非常に辛くなる。だからまず、冷静に見られる距離を取りましょう、というのが『親不孝介護』のキモで。
Mさん:そうそう。これは息子、男性はそうだろうなと思いますが、娘、少なくとも私は、「なるべく実家に足を向けたくない、距離を置いておきたい」と思っていて、これが娘と母のよくあるパターンじゃないかなと。
川内:なるほど。
編集Y:ということは、女性はわりと自然に「親不孝介護」ができている、もしくはできやすい?
Mさん:いや、そうでもないですよ。たとえばこの本で、包括(地域包括支援センター、介護関連の相談窓口、無償)には「親を抜きにして相談しに行っていい」という話が、私にはすごく刺さりました。
川内:そうでしたか。
Mさん:なぜかというと「親と距離を取りたい、でも具体的にどうすればいいのか」というのが分からないんですね。というのは、いつも娘の背後には母親が“がしっ”とかぶさってくるものなんです。で、それは嫌なんだけれど、母親の存在を抜きにして物事を考えるのがなかなか難しい。
編集Y:つまり、「母と距離を取るための動きを、お母さんに了解を取らないと始められない」みたいな。
Mさん:そうそう。なので、『親不孝介護』を読んで、当人の了承がなくても相談をすることができる、というのは、ものすごくありがたい情報で、私も相談しに行こうと思いました。
編集Y:素晴らしい。
川内:よかったです。
Mさん:もちろん、親との関係や距離感は本当に人によってさまざまなので、「安全基地」が失われていく不安を感じる女性の方もたくさんいらっしゃると思います。私の場合は、ということです。
編集Y:お断りをありがとうございます。この先もそういうことでご了解をお願いします。で、Mさんのお話でも、わが奥様を見ていても、母親との距離感が息子の自分とは違うな、ということは分かるんですが、もうちょっと具体的に言うと、どう違うんでしょうね。
Mさん:夫を見ていると、母親と息子って両方とも寄っていこうとするんですね。だけど、母親と娘だと、母親の側はそれほど意識してないんだけど、娘の側は「私をコントロールしようとしてくる」みたいな恐怖感があって距離を取りたい。そんな感じかな。
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