“患者の家族のプロ”を目指した

考えてみると、家族にとって、医療は圧倒的にプロのお医者さんのほうが“強い”し、相談窓口もない。一方介護は、プロと、家族の間に入るケアマネがいて、何でも相談できる窓口として自治体が「地域包括支援センター(包括)」を用意している。もちろん役割が違うから当たり前の部分もあるでしょうけれど、家族の側からしたら、医療に比べて介護のシステムはすごくフレンドリーにできていますよね。

深田:それはその通りだと思います。なので私は「患者の家族のプロ」になろうと思ったんですね。

患者の家族のプロ、とは?

深田:私は15年に初期の乳がんになって、その治療をしていたときに「患者のプロ」になろうと思ったんです。家に余っていたリングノートがあったので、診察のときにそれを膝の上に置いて、医師と話したことをその場で書きとりました。医師に会う前には乳がんのことを色々調べて、治療方針とか、術後に何をするとかを書いておいて、医師がそのことをいったらその部分に○をつける。質問も書いておいて、答えてもらったらそのノートにどんどん書き込んでいく。

川内:なるほど。医師の指示をただのみ込むのじゃなくて。

深田:はい、健全な疑問を持って、ちゃんと質問して説明してもらって、納得して治療を受ける「患者のプロ」を目指そうという目標を立てて。言葉一つ取っても、医師が言うことって、聞き慣れなかったり意味が分からなかったりすることが多いじゃないですか。そういったことを流さずに、リングノートを活用しながら「今、医師はこういうことを言っている」「ならば自分はこういう疑問を持つのだが」「なるほど、そういうことか」を繰り返して、患者のプロになったわけです。

言い換えれば、医師と合理的な会話ができるくらいに自分で勉強して、相手にも一目置かれるようになっちゃおうという。

深田:はい。そしてこの経験を今度は義父母の介護と看病に生かして、「患者の家族のプロ」を目指しました。

医療と介護のギャップで、間に入ってくれる人間がいないなら、自分でなっちゃおうということですか。

深田:そうです。『親不孝介護』に、(あとから家族になった)お嫁さんのほうが「親孝行の罠」にハマりにくくて上手に介護できる、というお話がありましたが、私はちょうどそんな感じだったのかもしれません。

(つづきます)

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