深田:それで義母は休薬することになり、1~2カ月に1度検査を受けに病院に行くような流れになりました。実の娘でもないのに私もここまでよく言ったな、と思うんですけどね。
川内:深田さんの対応はすばらしいと思います。医療の現場のお話をうかがいましたが、介護にもすごく通じる考え方だと思います。その判断を深田さんに任せてくれるご家族もすばらしい。

深田:実は私、家族中から絶大な信頼がありまして(笑)、義父母のお世話に関しては、全権を任されているんです。もし、これが義母の実の息子たちだったら、義母の「頑張ります」を額面通りに「副作用があっても抗がん剤の治療を頑張ります」って捉えてしまうかも。「がんを治すことよりも、わが夫のお世話が優先と本人は考えているはず」と、実の子が医師に言うのは難しいでしょうね。
川内:そう思います。子どもは「とにかく親に元に戻ってほしい、そのためなら多少の苦痛は」と考える、「親孝行の呪い」にハマりがちですからね。
本人が何を望んでいるかとは関係なく、自分の「親を元通りに」という気持ちを優先してしまう。
川内:そうです。
医療でのケアマネ的な存在は?
これまで色々な方にお話をうかがってきましたが、佐々木淳先生(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長、「『年をとったらハンバーガー!』老後も介護も常識を疑え」)以外は、介護の視点からでした。今、ふと思ったのですが、医療に関しては、介護におけるケアマネージャーのような、何でも相談できて、アドバイスをくれる人はいるのですか?
深田:いないように思います。そう考えると、医療のほうがハードルが高いかもしれませんね。
川内:生活支援まで考えてくれるタイプの医師もいます。ですので、病気のこと以外、生活全般のことをフォローしてくれるケースはあるかもしれません。ただ、やっぱりそういう人は少数ですね。
その場合は家族はどうすればいいんでしょうか。
川内:在宅医療に力を入れている医師や、病院の医療ソーシャルワーカーがその役割を担うことになります。
そうだ! 医療ソーシャルワーカーさんだ。本当は、深田さんがお義母さんの気持ちをくみ取って、医師に伝えたようなことをやってほしいところですよね。
川内:本当はそうなんですけれど。
深田:いや、そこまでは無理でしょう。連続性がないと患者本人の気持ちの底までは分からないから。
そうか、発言の背景を知らないと難しいですもんね。そこは結局家族の役割になるのかな。
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