(前回はこちら→深夜2時に電話してくる父を、娘はどうすべきか)
「ご家族が施設にたくさん面会に来られてしまうと、あえての言い方をしますけど、施設の介護スタッフと入居している親御さんとの関係構築が阻害される可能性がある」というお話が、川内さんから出ました。
翻訳者・畑中麻紀さん(以下、畑中):父に頼まれて食事を差し入れしていたんですけれど、きっとこれもそうなんですよね?
NPO法人となりのかいご代表・川内 潤さん(以下、川内):はい。仮にスタッフが食事を買ってくる場合、ただお父様に頼まれた食事を渡すのではなくて、「何で今日は天丼なのか」とか、「何で今日はすしなのか」とか、「何でカップラーメンなのか」と考えます。
どうして日清カップヌードルなのか
川内:「カップラーメンでも、なぜ他のものではなくてカップヌードルなのか」みたいに、あれだけ種類がある中で、何で日清のこれなんだろうというのが、実は大事なんです。
そこでもし私たちが、買ってくるのを頼まれる立場にいれば、「お父さん、何でカップラーメンなんですか」と聞けるわけです。おすしなら「何でトロだけさび抜きにするんですか」とか、切り口に気が付くんです。
そんな細かいところから、その人を知る手がかりがつかめるんですか?
川内:はい、細かいこだわりなんですけど、でもそこに、やっぱり生きてきた年輪みたいなもの、エピソード、その方なりの生きてきた足跡が見えたりもする。そういうことがあると、何というんですかね、また一歩関係を近づけることができるんです。
畑中:なるほど、そういう興味を持つ余裕は家族だとなかなかないかもしれませんね。
川内:そうなんです。直(じか)にお世話をしていたらますますそんな余裕は持てなくなります。
なので、前回ご相談があったような夜中にお父さんからかかってくる電話には「眠いから無理」がいいかもしれないですね。電話に出ても、もう、のれんに腕押し的な対応で。これが一番ご家族も傷つかないし、お父さんとしても、「これは娘に頼ってもだめだな」と自然に思えるかもしれない。「だめだこりゃ」と思ってもらうのが、すごく大事だなと思います。
畑中:そうですね。かーっとなっちゃうとだめですよね。
川内:そう。
そうですよね。さんざん母親にキレた私にはよく分かります。
川内:子どもさんもボルテージ、上がるので。
上がりますよね、親がだらしないことやわがままを言い出すと、「こっちの苦労も知らないで」と。
川内:もうしょうがないですよね。だってそれが家族なので。ご家族としての強い関係性があるからこそ、お互いの気持ちが言わずに分かったりする。まあ、通じ合ってしまうので、一緒にヒートアップしちゃうこともあるんですけれど。
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