お金を子どもが管理するのは、正しいが間違っている
畑中:数日たって、ふと、「あれ、私はお父さんを管理しようとしているぞ?」と気が付いたんです。父のお金だから、父が好きに使えばいいんですよ。もちろん1回に100万円、200万円使うようなことがあったら止めなきゃいけないけど、今日、明日、困るお金じゃないなら、そんなことまで私が管理するのは絶対間違っていると思って。ラジオで川内さんが「親を管理しようとしてはいけない」とお話しになっていたのを聞いて、改めてぞっとしました。これはもっと距離を置かなきゃだめだ、と痛感しまして。
川内:でも、よかったですね、ぞっとすることができたのが。それがどこまでもいってしまう方もたくさんいる。そして「父が言うことを聞かないんです」と私に相談に来られる。本当にたくさんいます。
どうするんですか?
川内:「ちょっと落ち着いて考えていただきたいんですけれども、親って、言うことを聞かせる対象として扱っていいんでしたっけ」という内容を、そのまま言っても伝わらないので、いろいろな言葉を使って気付いていただくように工夫します。
「だって親は判断力がなくなったんだから、子どもが指導して何が悪いんですか」と思う方もいそうですが。
川内:はい。家計や、必要か不要かという判断について論じれば、子どもが指導するのは正しい。でも、その正しさは誰にとってよきことですかと。ここになかなか気付けない方が多いんだろうなと。
そして食事について言えば、自分で食べようという意欲、食欲があるということは、とても素晴らしいことです。食欲は、生きる意欲なので、できるだけプラスに考えられるといいですよね。
畑中:そうですよね。私の役割は施設の方に「父は出前を取ったり、通販で注文したりしているので、何か困ったことがあったら私に連絡してください」と言っておく。そこだな、と考えて、そうしたら施設の方も「分かりました」と。
川内:よかった、よかった。
畑中:幸いなことに、施設の職員さん、ケアマネさん、看護師さんたちや介護士の皆さんのお顔をよく知っていてお話も頻繁にしていたので、「この人にはこのことを言えばいい」というのが把握できていました。でも、だったら、本当にもっと早く手を引いた方がよかったんですよ。なのに……。
(つづきます)
「長男だから、親を引き取るか実家に帰らないと」→必要なし!
「家族全員で、親を支えてあげないと」→必要なし!
「親のリハビリ、本人のために頑張らせないと」→必要なし!
「親が施設に入ったら、せめて、まめに顔を見せに行かないと」→必要なし!
「親と距離を取るほうが、介護はうまくいく」
一見、親不孝と思われそうなスタンスが、
介護する側の会社員や家族を、そしてなにより介護される親をラクにしていく。
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電通、ブリヂストン、コマツなど大手企業の介護相談で活躍中の川内潤さん(NPO法人となりのかいご代表)のアドバイスを受けて、遠距離の「親不孝介護」に挑んだ編集Yの5年間の実録。
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