そうした人材の在り方の根本的な転換のために従業員の幸福(ウェルビーイング)を上げていこうという考え方が今、パーパスとともに経営の新たなカギになりつつある。孤立・孤独の解消につながる取り組みは、ウェルビーイング向上に広がり、経営の中心に入ってきたのである。

 曖昧でつかみどころがないように感じられやすいが、「ウェルビーイングは科学。継続的な努力で高められるし、業績に効果があることも実証されている」と日立製作所のグループ企業で、幸福度を高めるアプリ開発をしているハピネスプラネットの矢野和男代表CEOは言う。

 日立の公表資料によると、矢野氏らはAI(人工知能)とウエアラブルセンサーを使い、コミュニケーションの質を高めたり、働き方を改善するアドバイスを自動で出したりして従業員の幸福度を向上させる技術を10年代に開発している。それを使って16年6~10月にかけて日立グループの営業部門26部署で実験したところ、システムの効果で組織が活性化した部署は、活性度が低下した部署に比べ、同年10~12月期の受注額が前四半期に比べ平均27%上昇したという。

 日立は、この実証実験を経て20年7月にハピネスプラネットを設立した。そして、今年5月には従業員の幸福度を上げるための企業向けスマホアプリ(正規版)の提供を始めた。既に100社が導入し、活用を始めているという。

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この記事はシリーズ「今こそ「孤独解消」 孤立する社員を救う処方箋」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。