新型コロナウイルス禍でリモートワークが定着。効率化は図られたが、果たして理想的な働き方なのだろうか。人とのつながりが薄まり、心の中に潜む孤独感が増大していないだろうか。組織への帰属意識が失われ、エンゲージメントは下がってはいないだろうか。

【今こそ「孤独解消」 孤立する社員を救う処方箋】記事ラインアップ
※内容は予告なく変更する場合があります
(1)リモートワークは理想的な働き方か 増幅する孤独(今回)
(2)すれ違う上司と部下 なぜ組織の中に孤独が生まれたか
(3)「国民8割に孤独感 みんな孤独予備軍」 小倉担当相の危機意識
(4)人付き合いある? 孤立してない? 「あなたの孤独度」を診断
(5)SOMPO、SCSK、NTTコム…社員の幸福度向上、経営の中心に
(6)昭和の社内行事・運動会が再評価 若手ベンチャーで結束感爆上がり
(7)「脳トレ」川島隆太氏が警鐘、リモート社会の行き着くディストピア
(8)産業医が見る「孤立・孤独」時代の上司のあり方 江口尚氏
(9)労基署立ち入りから人材重視へ転換 すし銚子丸の「社員の幸福度」
(10)日本の孤独をなくすには「あなたのいばしょ」理事長大空幸星氏
(11)楽天、アステリアのウェルビーイング 「CWO」を置く理由
(12)「脱PDCAで幸福度をもう一度上げよう」慶応大学・前野隆司教授
(13)テクノロジーで幸福度を上げる ハピネスプラネット矢野社長
(動画)10月10日号特集「孤独が会社を蝕む」を担当編集委員が解説

 妻がリモートワーク鬱になりまして──。こう打ち明けるのは千葉商科大学准教授で働き方をめぐって積極的に発信を続ける常見陽平氏だ。

 勤務先の外資系大手IT企業は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年3月中旬からリモートワークへの移行を決定。通勤はなくなり、家族と過ごす時間は増えた。

 職場の人間関係は極めて良好で、ワークライフバランスも向上したようにも見えた。しかし、しばらくすると弱音を口にするようになる。

 「ちょっとつらいかも」

 リモートワーク開始から1年半になろうとする21年夏には目に見えて体調が悪化していた。「ぐったりしていることが多く、睡眠も浅かった」(常見氏)。病院にかかると、軽度の適応障害だと診断された。この間、一度も出社していなかったという。

新型コロナウイルス禍で多くの企業がリモートワークを導入したが、心身の調子を崩す人も出ている(写真:yellowpicturestudio/Getty Images)
新型コロナウイルス禍で多くの企業がリモートワークを導入したが、心身の調子を崩す人も出ている(写真:yellowpicturestudio/Getty Images)

 幸いにして休職するほどの容体ではなかったため、産業医と相談してまずは仕事量を減らし、適度な運動を日常に取り入れた。これまで以上に家事を引き受けるなど常見氏の支えもあって、半年ほどで体調は回復。元通り、ソフトのライセンス管理の仕事にいそしんでいるという。

次ページ 表面的なやり取りばかり