前回は深層学習の持つ「認識」の力について説明してきましたが、深層学習の力はまだまだこれだけではありません。認識以外にもさまざまなタスクをこなすことができます。
深層学習の力の2つ目のポイントは「生成」。物をつくったりデザインしたりすることです。そういったところでも深層学習技術を活用できるようになってきています。
自分だけのキャラクターを自動で生成


上の写真はこれまでとは少し毛色の違った事例になりますが、自動で絵を描くシステムになります。コンピューターがまず、人間のイラストレーターが描いたようなキャラクターの絵を自動生成します。そのキャラクターの髪形や目の色などを、人が指示してコンピューターが自動修正しています。絵を描くスキルや時間がない人でも、多様なキャラクターのイラストを完全に自動で生成できるだけでなく、人の指示を簡単に反映できるようになっています。
このように、深層学習はものづくりやデザインの分野でも活用が始まっています。2022年4月にサービス提供を始めた「Crypko(クリプコ)」では、顔だけではなくて、上半身まで生成できます。物体を認識するだけではなくて、物をつくり出す力すらも、深層学習が持ち始めているわけです。ここまで高い表現力を、深層学習を使ったシステムが持つようになってきています。
さらに、我々はこういった技術を用い、新しい体験ができるエンターテインメントを生み出そうとしています。これまでのゲームは少数のキャラクターから自分のキャラクターを選んで遊ぶのが一般的でしたが、我々が現在開発しているアプリでは、画像生成やキャラクター生成の技術によって、キャラクターを無限に生成できるようになります。
その性質を利用し、キャラクターを自動で生成して育てていくという、今まで実現できなかったような体験を実現しようと開発を進めています。
アニメーションの背景生成作業時間が手描きの6分の1に
次に人と機械が協調しながらデザインをつくり上げていく事例として、アニメーションの背景生成を紹介します。2次元アニメーションの背景はプロの背景アーティストが写真をもとにしてゼロから描いているのですが、非常に手間がかかります。その背景美術の制作に深層学習を活用しようというものです。
写真の特徴をどんどん抽出してマッピングし、人が良いか悪いかを選んでいくことで背景を生成していく。これによって、写真からの原画生成をだいたい50分で終わらせることができます。一方、手描きは一から生成することになるので、だいたい5時間かかる。深層学習によって、手描きに比べて作業時間が約6分の1にまで短縮されました。
Powered by リゾーム?