今後の日本が目指すべき、「数」と「質」を両立させた観光立国の実現。その課題を既に克服した国がある。アジアの金融センター「シンガポール」だ。“観光長者”から日本は何を学べるのか。取材班は小さな島国で、秘訣を探った。

国の象徴とも言える「マーライオン像」が鎮座するマリーナ湾周辺エリア。海外からの観光客で再びにぎわい始めている
国の象徴とも言える「マーライオン像」が鎮座するマリーナ湾周辺エリア。海外からの観光客で再びにぎわい始めている

 8月中旬、シンガポール海峡から入り込んだマリーナ湾の周辺は人波で埋まっていた。この地域はマリーナベイ・サンズ(MBS)やマーライオン公園といった観光スポットのほか、超高層ビルが立ち並ぶ金融街、安価な食事が楽しめる屋台街が隣接する国内有数の繁華街だ。行き交う人で目立つのは、海外から訪れたであろう観光客の姿だった。

 「ようやく街の風景も元通りになってきたかな」。こう話すのは2019年から現地で暮らす30代の日本人女性。シンガポールは新型コロナウイルス禍でロックダウン(都市封鎖)を経験し、一時は街から人の姿が消えた。厳格な水際対策も展開したため、日本と同様に外国人観光客を目にする機会もほぼなくなった。

観光収入、15年で4倍弱に

 22年に入ると日常生活は正常に近づき、水際対策も緩和が進んだ。シンガポールを訪れた外国人客数は1月に6万人弱だったが、7・8月には月間70万人台まで回復。両月の訪日外国人客数が15万人前後にとどまる事実を考えると、シンガポールの観光経済が急速に復調していると分かる。シンガポール政府観光局のキース・タン長官は「24~25年までにコロナ禍前のレベルまで観光産業の状況が回復すると期待している」と話す。

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