いま現指導部は、自らの外交路線を「中国の特色ある大国外交」(大国外交)と呼ぶ。かつて、胡錦濤(フー・ジンタオ)指導部は、自らの外交路線の目的を「調和の取れた世界(和諧世界)の構築」と説明していた。それは、流動する国際秩序において、国力を増大させつつも、自己抑制的な「平和的な発展」と国際社会への貢献を整合させたものであった。経済成長を最優先の課題と位置付け、改革開放政策を通じて既存の国際秩序に適応して行くという外交、すなわち「韜光養晦、有所作為(時を待ち、できることをする)」といわれる国際社会において低姿勢を堅持する、と理解されてきた。

 現指導部は「平和的な発展」を継承している。しかし、その実態は前指導部と比較して異なる。「大国外交」には2つの原則がある。1つは中国の経済発展に必要な国際環境を形成するために「平和的な発展の道を歩む」ことであり、いま1つは中国が「平和的な発展の道を歩む」ために主権や国益に関して外国に譲歩してはならないし、また「平和的な発展の道を歩む」ために中国が主権や国益に関して譲歩すると外国に思わせてはならない、である。

 国際社会が、「大国外交」に2つの側面を見いだすのは、それが協調性(「平和的な発展の道を歩む」)と強制性(主権や国益に関して譲歩しない)を併存させているから、といってよい。

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