2022年10月16日、5年ぶりに中国共産党党大会が開かれる。写真は17年10月の党大会(写真:AFP/アフロ)
2022年10月16日、5年ぶりに中国共産党党大会が開かれる。写真は17年10月の党大会(写真:AFP/アフロ)

 国際秩序は大きな変動期にある。国際社会が共有してきた価値と利益に対する認識が流動し、国際社会において共通して了解されている制度(ゲームのルール)は動揺している。日本は、既存の国際秩序の中で平和と繁栄を享受してきた。そうであるが故に、この秩序の変動を感度良く捉え、冷静な現状分析が必要である。

 中国は、この国際秩序の流動をけん引する主要なアクターである。経済的成功を通じて国力が増大した中国は、大国としての意識を強め、自国の経済成長と安全を維持するために必要な環境を構築する外交を推しすすめている。現在の指導部は、これを「大国外交」という。

 日本は、この中国と東シナ海を介して向き合っている。日中関係とは、1972年に国交を正常化させて以来、50年の間、地域の平和に貢献し、地域と世界の経済発展をけん引してきた国際秩序である。しかしいま、この秩序は、人的にも経済的にも緊密でありながらも、典型的な安全保障のジレンマに陥っている。日本社会において、国際秩序の流動をけん引する中国に対する理解を深めるためのリテラシーが求められているゆえんである。

大国外交という外交路線

 中国は、その力をどのように使い、どのように国際社会と関わろうとしているのか。この問いが重要であるのは、中国と国際社会の相互作用が、これからの国際政治、経済、軍事、そしてグローバルガバナンスの規範の形成に影響を与えるからである。気候変動、経済成長、そして海洋秩序やサイバー空間、極地、宇宙をはじめ、国際社会が直面している問題を解決するための有効な制度を設計するためには、大国としての中国の関与が不可欠である。

 冷戦という国際秩序が流動してから30年あまりが経過した。この30年を経て国力を増大させた中国は、地域における力(パワー)の分布に影響を与え、世界政治と経済の重心がアジア太平洋地域へ移行することを力強く促してきた。国際社会が中国とどのように向き合うのかを共通の問いとしてきたように、中国もまた国際社会における自らの存在位置を模索してきた。

 中国の外交路線は、近年、大きく転換している。2017年の第19回中国共産党大会において、習近平(シー・ジンピン)国家主席が語った「中国は国際舞台の中心に躍り出ようとしている」という高揚感あふれる言葉は、習近平指導部の現状認識を明確に示している。