2022年8月に逝去した京セラ創業者の稲盛和夫氏。「どうすれば会社経営がうまくいくのか」という経営の原理原則をまとめた「経営12カ条」を自身の言葉で解説する書籍の発行準備を進めていた。同書の内容を基に、稲盛経営の集大成ともいうべき12の経営の原理原則を一つずつ紹介していく。今回は第9条「勇気をもって事に当たる」。

(写真:PIXTA)
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 「経営12カ条」では、第7条「経営は強い意志で決まる」、第8条「燃える闘魂」、第9条「勇気をもって事に当たる」と一見すると似たような内容が続きます。第9条で「勇気をもって事に当たる」とわざわざ言うのは、次のような理由があるからです。

 経営者やリーダーにとって自分がおかした過ちを潔く認めて改めることは、勇気のなかでも一番大切なことです。失敗した場合、たいていの人は、言い逃れをしたり言い訳をしたりしますが、部下から見ればそれは見苦しいものです。自分が失敗したことを素直に認めて、過ちを改めることは、非常に勇気の要ることですが、これが一番大切な勇気なのです。

『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著、日経BP 日経新聞出版)
『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著、日経BP 日経新聞出版)

 そういう真の勇気をもっていないと、部下の信頼を失ってしまいます。たとえば、過ちを詫びもしないで、平然としているような卑怯な振る舞いをしていると、部下はリーダーを尊敬するどころか、軽蔑するでしょう。たった一度でも、そうした卑怯な振る舞いをして部下の信頼を失えば、後々そのリーダーがどんな立派なことを言おうと、部下はその言葉を信用せず、ついてきてはくれません。部下からの尊敬と信頼を失い、軽蔑を受けるようなことがあっては、リーダーとしての資格を失ったも同然です。

 過ちがあれば潔く認めて詫び、決して言い逃れをしてはなりません。部下の前で言い逃れをし、理屈にもならない理屈をこね回して、自分の正当性を示そうとするリーダーがいますが、これは卑怯な振る舞いです。それは、部下からも見え見えで、そういうリーダーは経営者の端くれにも入りません。 

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