2022年8月に逝去した京セラ創業者の稲盛和夫氏。「どうすれば会社経営がうまくいくのか」という経営の原理原則をまとめた「経営12カ条」を自身の言葉で解説する書籍の発行準備を進めていた。同書の内容を基に、稲盛経営の集大成ともいうべき12の経営の原理原則を一つずつ紹介していく。初回は第1条「事業の目的、意義を明確にする」。

(写真:PIXTA)
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 なぜ、この事業を行うのか。あるいは、なぜ、この会社が存在するのか。さまざまなケースがあると思いますが、まずは自分が行う事業の「目的」や「意義」を明確にすることが必要です。

 なかには、「金儲けをしたいから事業を始めた」という人もいるでしょう。「家族を養わなければならないからだ」という人もいるかもしれません。それでも結構ですが、それだけでは、多くの従業員を糾合(きゅうごう)するのは難しいはずです。

 やはり、事業の目的や意義は、なるべく次元の高いものであるべきです。言葉を換えると、公明正大な目的でなければならないはずです。

 従業員に懸命に働いてもらおうとするなら、そこには「大義名分」がなければなりません。「自分はこの崇高な目的のために働くのだ」という大義名分がなければ、人間というものは心から一生懸命にはなれないのです。

若い従業員たちの反乱

 私は京セラをつくったとき、「事業の目的とは何か」という問題に遭遇しました。当時の私はまだ経営のあるべき姿を知らず、京セラという会社を「自分が持つファインセラミックスの技術を生かして製品開発をし、それを世に問う場である」と位置づけていました。

『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著、日経BP 日経新聞出版)
『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著、日経BP 日経新聞出版)

 当時は、技術力よりも学歴や学閥などが尊ばれ、実力を正しく評価してもらえない風潮があり、私は最初に勤めた会社で大きな失望感を味わっていました。そのため、新しくつくる会社では、誰に遠慮することなく自分のファインセラミック技術を世に問うことを目的としていたわけです。ひとりの技術者あるいは研究者として、磨き上げた自分の技術をようやく遺憾なく発揮する場ができたと私はたいへん喜んでいました。

 しかし、その喜びもつかの間、創業3年目に、若い従業員たちの反乱に遭遇したのです。

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