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清水雄也(しみず・ゆうや)
清水雄也(しみず・ゆうや)
京都大学宇宙総合学研究ユニット特定助教、科学哲学者。1986年、長野県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。一橋大学大学院非常勤講師などを経て現職。

 科学哲学を専門とする研究者の清水雄也さんと、広告を制作する澤本嘉光さん。一見、接点がないように見えるお二人は、「宇宙」というキーワードでつながっています。

澤本嘉光さん(以下、澤本):電通に「宇宙ラボ」という「宇宙の相談窓口」があり、僕もそのメンバーに入っています。もともと地球から見上げる宇宙が好きで入ったのですが、いまは宇宙から見る地球のデータの話をよくしています。

 宇宙利用については、それこそ清水先生の方が、あ、「先生」って呼んじゃいけないんだった。

清水雄也さん(以下、清水):先生って呼ばれると恐縮しちゃうんです、すみません。

澤本:気を付けます。それで、清水さんの方がよくご存じだと思いますが、有名な例で言うと、衛星から取った地球上のデータの活用です。例えばニュージーランドのキウイの産地と、ほぼ同じ地表温度、降水量の町が日本にあるとしたら、そこにキウイを植えれば産業化できる、といった分析と実践などです。

清水:なるほど。たしかに、衛星データ活用との関連で、農作物関連の話もよく聞くようになりました。

宇宙と戦争は切っても切れなくなった

澤本:僕たち一般人が「宇宙」と言うとき、それは地球から眺め上げる宇宙ですが、実はビジネスでいうと、宇宙から地球を見る方向がある。例えばキャベツの生育状況も宇宙視点から分かるから、その生育状況に合わせてスーパーに何を置いたら売れるか、みたいな最適化のビジネスができる。これ、宇宙がらみの話ですが、宇宙倫理と全然関係ないかな。

清水:いやいや、ありますよ。衛星データビジネスは、宇宙ビジネスの中で代表的な事例の一つですね。それで、衛星データの活用というと、どうしても軍事利用、安全保障の問題が出てきます。

 そこに来ますよね。

清水:地球上の各国が自分たち国の人工衛星を打ち上げて、仮想敵国のデータを取るようになっている。そうなると、都合の悪い相手の衛星を破壊すること、あるいは機能不全に陥らせることが、重要な意味を持ってくるわけです。

澤本:ロシアのウクライナ侵攻では、かなり話題になっていますよね。

 ウクライナ侵攻は戦闘の場が、サイバー空間と宇宙空間にも拡大している恐怖を、如実に示しています。

清水:ですよね。宇宙と戦争の問題は、まずは政治や軍事の話ですが、やはり倫理という論点も深く関わってきます。

澤本:先ほど僕がお話しした人工衛星によるデータ取得は、ビジネスとして使うものですが、機能だけでいえば、それって軍事にも使えますよね。

清水:例えば、農業振興のために自治体や民間が打ち上げた衛星が、有事の際に軍事的に用いられる可能性はあります。軍事と民生、両側面の使い方ができることをデュアルユースと言いますが、宇宙に上がっている人工衛星は、そうした性質を持っています。他方で、戦争倫理において民間と軍用の区別は非常に重要でもあります。

 有事の際に民間のものと軍用のものを区別して、民間のものには手を出さない、なんてことはできるのでしょうか。

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