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清水雄也(しみず・ゆうや)
清水雄也(しみず・ゆうや)
京都大学宇宙総合学研究ユニット特定助教、科学哲学者。1986年、長野県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。一橋大学大学院非常勤講師などを経て現職。

 澤本嘉光さんを導き手に、世の中に潜む「異人」を巡り歩く「異人探訪記」。今回は「宇宙倫理学」をテーマに、「京都大学宇宙総合学研究ユニット」(以下、宇宙ユニット)の清水雄也先生をお訪ねしています。進行役の清野由美です、よろしくお願いいたします。ところで、清水先生は「先生」と呼ばれるのが苦手とか。

清水雄也さん(以下、清水):はい。どうかやめてください(笑)。

 承知しました。まずは、宇宙倫理という未知の領域に入り込む前に、澤本さんと清水先生、いや、清水さんとのなれそめからうかがってもよろしいでしょうか。

澤本嘉光さん(以下、澤本):2016年に電通が社内横断組織の「宇宙ラボ」というものを立ち上げました。簡単に言うと、宇宙開発技術のビジネス活用をテーマにした「宇宙に関する相談窓口」で、僕もその一員なのですが、そこのメンバーである電通のビジネス・プロデューサー、片山俊大さんという方が、旅行、教育、スポーツ、ファッションなど、いろいろなことを宇宙とつなげる活動をしているんです。その片山さんから、京都大学で「宇宙倫理学」をやっている先生がいると聞き、あ、先生って言っちゃいけない(笑)、それが面白いということで、片山さんと一緒に清水さんの研究室に話を聞きにうかがった。それが最初ですね。

清水:片山さんは『超速でわかる! 宇宙ビジネス』というご著書で、宇宙開発の歴史から、宇宙ビジネスの事例、プレーヤー、今後の方向性など、分かりやすく総合的に解説しておられます。それに比べて、宇宙倫理はとっつきにくい領域だと思います。にもかかわらず、澤本さんは宇宙倫理に対して、私が思っていたよりも強く関心を寄せてくださり、その後、別の講演にも来てくださいました。

 すでに2回お話を聞かれているんですね。

澤本:そのわりに理解が進んでないので、もうちょっと理解しないとだめだな、と思いまして。

東大では政策を、京大では人文を

 まず「宇宙倫理学」という言葉が、非日常であり謎です。

清水:みなさんにどのように興味を持っていただくか、私もまだ自信を持っていない段階なんです。ここから工夫していかなければ、と考えているところですので、そのヒントをうかがえたらうれしいです。

 そんな学問領域を、なぜ天下の京都大学が取り組んでいるのか。一般人としては、そのあたりに興味が引かれますが。

澤本:清水さんが宇宙ユニットに着任されたのは、わりと最近なんですよね。

清水:昨年11月に着任しました。それまでは東京にいました。宇宙に関する学問というと、普通は天文学やロケット工学などを連想されると思いますが、宇宙倫理学は広義の哲学に属する分野です。もともと、私自身の専門は、科学哲学と呼ばれる分野なんですが、いくつかの経緯から宇宙倫理学にも携わるようになりました。

 すでに話が分からなくなっていますが、宇宙倫理学は清水さんにとっても、未踏の地に足を踏み込む、みたいな感じなのですか。

清水:そうですね。日本では、2008年に成立した宇宙基本法のこともあり、国家としての宇宙への向き合い方が変わってきました。それまでは、公的プロジェクトとしての通信、気象、探査などが中心でしたが、安全保障目的での宇宙利用が解禁され、また、民間宇宙開発の推進が重要課題として明示化されるようになりました。もちろん、平和利用原則がそこには敷かれています。JAXA(日本宇宙航空研究開発機構)は東大や京大と連携プロジェクトを組んでいますが、東大では法的な基盤整備など政策的な研究が中心に行われている一方、京大では人類学や哲学の研究者らが参加する人文学的な研究にも取り組んできました。その中で、ある時期から宇宙倫理学の研究と教育がなされるようになり、それと接点を持ったことがきっかけで、私も宇宙倫理学に関わるようになりました。

 教養方面に強いというのは、まさしく京大のイメージですね。

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