人と話すから自分が分かる
このような対談で、田中さんとお話しすることも、澤本さんにとっては考えの整理になっているのでしょうか。
澤本:まさにそうです。こうやって場を持ってお話していると、日々、普通に接しているときとはまた別の、田中さんならではの考え方が、ちゃんと聞けるじゃないですか。そうか、田中さんはあのとき、そう考えていたのかとか、美容液の塗り方はこうなのかとか、今日の話の中に、いろいろと学べるところがあって、そのことによって、自分が何かしら向上したように思える。田中さんは基本的に、鋭くいろいろ言ってくる人でもあるので。
田中:澤本さんのように、これだけ人前に出たくない人が、「日経ビジネス電子版」で対談の連載をやっているって、すごく不思議だったんですけど、今のお話を聞いて、少し分かった気がします。
人とお話をすることで得るものは大きいですよね。頭の中も整理されるし、聞いてもらうことで、普段、思い返しもしない幼少期だったり、駆け出しのころの想いだったり、様々なことを思い出させてもらえる。それが次の自分の生き方についてのヒントになりますし、ある種、利用という言葉はあざといですけど、澤本さんはそういう場にしているのかな、と思いました。でも、目立つの、嫌なんですよね?
澤本:嫌なんです。
田中:だいたい、みんなで写真撮りましょうよというときも、澤本さんは隅で小っちゃいおじさんみたいな感じで、怖い顔して写っているから。
年々そういう謙虚というか、遠慮しいは増してきているとか?
澤本:いや、逆です、逆。むしろ年々、羞恥心がなくなってきている感じ。
ほら、おじさんって、ダジャレを言うでしょ。それは、羞恥心がなくなっているからだと思うんですよ。ダジャレって面白くないし、聞かされる方は迷惑なのに、僕も一瞬、言いたくなるんです(笑)。羞恥心のなさは年を取って得られるある種の才能ですね。言いたくなったときに、寸前にストッパーがかかるようにはしていますが、そのストッパーがだんだん利かなくなっている感じを自覚しています。
田中:老化の一番の表れは、羞恥心がなくなること。女性も同じ。そこは気を付けて、自身を俯瞰(ふかん)で見つめないと、本当にどんどん痛い人になっていっちゃいますからね。
澤本:そこだけは気を付けないとな、って。
SNSの流行以降、そんなことを全然気にしてない人たちも、世間にはいっぱい登場していますが。
澤本:それはそれでいいんです。気にしないということも、才能の一種ですから。それぞれの才能で、それぞれの場で生きていける時代だとは思います。
田中:なるほど。
→第4回に続きます。

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