でも、私がそのサークルのその他の方の女子だったら、同じこと感じていたかも。田中さんがいたら、嫌ですよ~。

澤本:田中さんが近くにいてそういう距離感だったら、男の子はみんなころっと行っちゃいそうに見えるじゃないですか。

澤本嘉光(さわもと・よしみつ)
澤本嘉光(さわもと・よしみつ)
電通グループ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター、CMプランナー、脚本家。1966年、長崎市生まれ。90年、東京大学文学部国文学科卒業後、電通に入社。ソフトバンク「白戸家」シリーズをはじめ、トヨタ自動車「ReBORN」ドラえもん編、資生堂、東京ガス、サントリー、家庭教師のトライなど、時代を代表する国民的CMキャンペーンを多数手がける。クリエイター・オブ・ザ・イヤー3回受賞。脚本担当の映画に「犬と私の10の約束」(2008年、田中麗奈主演)、「ジャッジ!」(14年、妻夫木聡・北川景子主演)、「一度死んでみた」(20年、広瀬すず主演)ほか。小説『おとうさんは同級生』、乃木坂46などのMV制作など、幅広い分野で活躍。12年「日経ビジネスオンライン」の連載「澤本嘉光の『偉人×異人』対談」で、星野源、細野晴臣、細田守、佐渡島庸平、小山薫堂、糸井重里と対談

自分の彼氏とかも、ころっと行っちゃいそうですよ。

田中:……。女の人って面倒くさいなと身に沁(し)みた後で、私は女子アナの世界に入っていくわけなのですが。

さらに怖い世界でした?

女子アナ業界は実力勝負過ぎてカラッとしている

田中:そうかと思いきや、そんなことはなかったんですよ。女子アナの世界は、外から見ていたイメージよりもかなり個人主義で、まったくドロドロしていないんです。個人的に思うことはそれぞれあるとは思いますが、集団で誰それをどうこうしようとかは、まるでない。そんな時間も体力も興味もない、という感じでカラッとしていましたよ。

プロがしのぎを削る世界ですものね。

田中:プロ意識の塊みたいな人たちの集まりだから、かえって心地よかったです。

澤本:小学校のときに勉強が出来過ぎて、周囲から浮いていた子が、進学校に行ったら楽になった、みたいなことと通じますよね。

前回、澤本さんは「不安」「恐怖心」がご自身のデフォルトの感情だとおっしゃっていました。田中さんも『田中みな実1st写真集Sincerely yours...』が大ブレークしたとき、同じく「不安」を口にしておられましたね。

田中:あまりに話題にしていただいたので、実感がなくて不安になりましたが、写真集が出る前もまた不安で。「売れなかったらどうしよう」「損が出たら私が費用を負担できるだろうか」って、あれこれ思い悩んでいました。一流のスタッフを揃えていただいて売れなければ、もろ私にタレント力がないという表れになりますので。

澤本さんがおっしゃる不安も、同じようなところですか。一流のクライアント、一流のスタッフと一緒にやって、それが話題にならなかったらどうしよう、みたいな。

澤本:そこは違いますね。CM制作はクライアントに企画して提案を重ねる中で、最適解というものをお互いに認識し合う過程があります。その中で、次はどのように改善していけばいいか、といった前向きな話し合いができる。その点で、ご自身がメディアの中身そのものになっている田中さんと、その中身をつくる立場の僕という違いがあり、僕の方がやや余裕があるのかもしれないです。

田中:なるほど。

澤本:今、自分の言っていることが、自分でも分かっていないですけどね。

田中:いや、分かりますよ。だとしたら澤本さんのおっしゃる「不安」とは何ですかね。

次ページ もう直せないから最終回が見られない