田中さんはTBS時代に、マツコ・デラックスさんの女子アナディスり芸の標的になりました。マツコさんからは泣かされるし、世の女性たちからは反感を買うし、という修羅場でしたが、それでつぶれずに、かえって知名度を上げて、今の活躍につなげていらっしゃいます。
田中みな実さん(以下、田中):こういう裏事情を話すのは憚(はばか)られますが、バラエティー番組でのやり取りはプロレス。だから、いじられたときにどう返し、どうウケるかをある程度想定できていないといけないんです。
プロ同士のプロレスを終わらせてしまった
田中:プロ同士だから、本当のところ好きとか、嫌いとか、そんなことはどうでもよくて。ただ当時の私は若かったし、あせりもあった。その場の期待に応えたいとか、前回を上回るような成果を残したいとか、ヘンな欲が出てしまったんだと思います。それである回で、泣いた。「今回も期待してるよ!」という制作陣の思いになんとか答えたくて。禁じ手でした。泣いてしまったら、泣かせた方が絶対的に悪く映ってしまうことまで考えられていなかったんです。そこでプロレスが終わってしまいました。

マツコさんに「ぶりっこ」とたたかれていたことは、芸のうちだったのですか。
田中:たたかれていたわけではなく、エンタメであり、愛情だったと受け止めています。「前回、田中のおかげで面白くなったよ! 助かった。今回もよろしくね」と制作スタッフに言われたのがうれしくて、もっともっとと、自分にプレッシャーをかけて、それに負けちゃったという感じですね。
ですので、あれはマツコさんに泣かされたのではなく、私が勝手に泣いてしまった、というだけの話なんです。
澤本嘉光さん(以下、澤本):TBSのキャンペーンで2010年にCMに出てもらったときから、田中さんは役者ができる方だと僕は思っていました。だから、絶対俳優になった方がいいですよと、そのころから言っていて。
田中:それ、澤本さん、ずっと言ってくれていますよね。でも当時、私はアナウンサーであることに誇りがあって、アナウンサーとして大成したいという思いしかなかったから、受け流していました(笑)。
ちなみに田中さんは、TBSの「6チェン!」キャンペーン以降、澤本さんが作られるCMや映像に出演されたことはあるのですか。
田中:TBSを辞めた後、ソフトバンクのウェブのムービーに出させていただきましたね。
澤本:18年ですね。とても演技がうまかったし、東京03の角田晃広さんと共演していただいたんですが、演技と自分との距離のつかみ方もうまかった。
田中:でも、それ以降は、声をかけられません……。どうして?
澤本:いや、その、どうしてと聞かれても、そんなの仕方ないじゃないですか……。というか、田中さんはドラマや映画の演技の仕事と文を書くことの両方をやった方がいいと僕は思っていて。
田中:だいぶ苦し紛れですが! あ、そうそうTBS時代に「週刊プレイボーイ」で書かせていただいた連載コラムも、澤本さんは読んでくれていて、「ものを書くことを続けた方がいいよ」とも、言っておられましたね。
澤本:それは僕が「週プレ」を読んでいたということなので、ちょっと恥ずかしい。
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