損をする人とは話さなければいい

澤本:とにかく、あざとさにしても、美のカリスマにしても、田中さんは自分のポジション取りがうまくて。テレビ界って、何かで売れてもちょっと油断してそれに寄りかかっていると、次にはしごを外されて需要がなくなったりする怖い世界だと思うんですけど、そういう構図もちゃんと分かっていて、自己管理もスポーツ選手並みにきちんとしている。

田中:澤本さんはそうやって、自分のレベルを下げて――というと語弊がありますが、腰を低くして、本当は分かっていることでも、分からないふりをして、きちんと相手の話を聞いて理解しようとしてくれますよね。

本当ですか? 活字にするとすごく嫌なやつになりそうですね。

澤本:そうですね。活字にしなくても嫌なやつなんですが、僕、人の話を普通に聞いて、損したことって基本的にないな、って思っていて。いい人だから話を聞いているのではなく、得をするから聞いているんです。逆に損をする人とは、しゃべらなければいいと思っているから。

わあ、嫌な人ですね。

田中:言葉やニュアンスって難しいですよね。それは日々、実感しているところです。とりわけCMで何かを伝えるって、本当に難しいと思います。

 私は最近、美容やファッション関連のコラボや商品開発にも携わらせていただいているのですが、限られた数秒の中で、商品の魅力を最大限に伝え、誰かの心に刺さる。これが、どれほど難しいか身に沁(し)みて感じています。受け手としては、特性だけをつらつらと述べられても、響かないじゃないですか。でも、それを知らなければ、欲しいともならない。キャッチーであり、面白く、特性を伝え、誰かの心を動かす。澤本さんはそれを第一線でやっているわけですもんね。09年の入社当時は、そんなすごい人だって分かっていませんでした。

澤本:分からなくて大丈夫です。

田中:年齢を重ねれば重ねるほど、社会に出れば出るほど、こんなにすごい方と長くご一緒しているんだなと知って、尊敬の念が増します。

澤本:もういいですってば。

田中:素直に受け止めて(笑)!

→第2回に続きます。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「澤本嘉光の「異人探訪記」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。