部下に指示を理解し、動いてもらう。多くの中間管理職が悩むこの問題には実は、「誰がやってもうまくいく」方法論がある。それが「行動科学マネジメント」に基づく部下指導メソッドだ。最終回となる第6回は、部下の達成感を高めるためのサポート術をお伝えする。

(イメージ写真=PIXTA)
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 こんにちは、冨山真由です。この連載では「行動科学マネジメント」に基づく「部下に動いてもらう技術」を、3つのステップで構成してお伝えしてきました。行動科学マネジメントは米国のビジネスや教育の現場などで大きな成果を上げている、行動心理学や行動分析学を基礎としたマネジメント手法を日本人向けに最適化したものです。「誰がやってもうまくいく」再現性の高いこのメソッドを、皆さんの日ごろのマネジメントに役立てていただければうれしく思います。

 最初のステップ(第1、第2回)では、部下やメンバーとの間で「お互いに親近感を抱ける、ちょうど良い距離感」を築くポイントについて解説しました。次のステップ(第3、第4回)では、仕事の指示や頼み事をする際に「理解と納得感を深めてもらう」ためのコツについてお伝えしました。そして最後の3ステップ目(第5、第6回)は、部下やメンバーに「意欲や達成感を高めてもらう」ための技術についての解説です。

 最終回となる今回は、前回に引き続き3ステップ目、10の技術の後半5つである(6)~(10)について解説します。前回は主に、意欲を高めることを目的とした内容でしたが、今回は達成感の向上にフォーカスしたものを中心にお届けします。

意欲や達成感を高めてもらうための10の技術

ポイント(1):「結果」にこだわらず、相手の「行動」に注目して関わる
ポイント(2):相手が達成できそうな「小さな目標」から始めてもらう
ポイント(3):自分基準で判断せずに、「できているところ」を評価する
ポイント(4):「ひとつ気になりました」と前置きしてから話し始める
ポイント(5):同じ質問をされたら、「どう思いますか?」と聞き返す
ポイント(6):メールやSNSなどで役立ちそうな情報をシェアする
ポイント(7):目を見て話す「存在承認」も非金銭的報酬の1つになる
ポイント(8):定時になったら「時間、大丈夫?」の声がけが大切
ポイント(9):目標行動を達成したら、「ねぎらいの言葉」をかける
ポイント(10):「◯◯さんから聞きました」と第三者の言葉でアドバイスを

さりげない情報共有で成長をサポートする

 行動科学マネジメントでは、部下に仕事への意欲や達成感を持ってもらう上で、大切にしている考え方があります。前回にお伝えした、必ず達成できる小さな目標=スモールゴールを設定することもその1つでした。今回お伝えする(6)〜(10)の技術のキーワードでもある大切な考え方が、「非金銭的報酬」です。少し難しく思われるかもしれませんが、簡単に言うと「お金以外」の報酬(ごほうび)です。

 「今週は忙しかったけど、頑張ったからおいしいワインを飲もう」「今月の売り上げ目標を達成できたから、有給を取って温泉に行こう」といったように仕事の成果に対して、自分で自分にごほうびをあげたことのある人は多いと思います。人は努力したことでごほうびを得ると喜びが増し、「次の目標も達成できるように頑張ろう」と思えるものなのです。自分へのごほうびと同じように部下やメンバーにも喜ばれるごほうびを提供すると、それが励みになって目標達成への意欲が高まっていくはずです。

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