部下に指⽰を理解し、動いてもらう。多くの中間管理職が悩むこの問題には実は、「誰がやってもうまくいく」⽅法論がある。それが「⾏動科学マネジメント」に基づく部下指導メソッドだ。第4回は前回に引き続き、部下に「理解と納得感」を深めてもらい、意思疎通をスムーズにするためのポイントをお伝えする。

(イメージ写真=PIXTA)
(イメージ写真=PIXTA)

 こんにちは、冨山真由です。この連載では、「行動科学マネジメント」に基づく「部下に動いてもらう技術」を、3つのステップで構成してお伝えしています。⾏動科学マネジメントは米国のビジネスや教育の現場などで大きな成果を上げている、行動心理学や行動分析学を基礎としたマネジメント手法を日本人向けに最適化したものです。「誰がやってもうまくいく」再現性の高いこのメソッドを、皆さんの日ごろのマネジメントに役立てていただければうれしく思います。

 最初のステップ(第1、第2回)は、部下やメンバーとの間で「お互いに親近感を抱ける、ちょうど良い距離感」を築くポイントについて。次のステップ(第3、第4回)は、仕事の指示や頼み事をする際に「理解と納得感を深めてもらう」ためのコツについて。そして、3ステップ目(第5、第6回)は、部下やメンバーに「意欲や達成感を高めてもらう」ための技術についての解説です。

 今回は前回(「あなたの部下への指示や依頼、『すべきこと』は明確ですか?」)に引き続き2つ目のステップ、仕事の指示や依頼の際に「理解と納得感を深めてもらう」ための10のコツのうち後半の5つ、(6)~(10)を解説します。

理解と納得感を深めてもらうための10のコツ

ポイント(1):仕事を依頼するときには必ず締め切りの日時を伝える
ポイント(2):目標はなるべく数字で伝え、数字で報告してもらう
ポイント(3):依頼事項は3つ以上に「行動分解」してから伝える
ポイント(4):相手がどこでつまずくのか、行動観察して境界線を見つける
ポイント(5):定型業務のやり方はチェックリスト化して共有する
ポイント(6):相手への依頼は「5W1H」の視点で具体的に伝える
ポイント(7):具体的な選択肢を2つ用意して相手に選んでもらう
ポイント(8):「ダメ出し」ではなく、メリットを「アドバイス」する
ポイント(9):大切な話し合いをする際は「目的」を共通認識にしておく
ポイント(10):説明の際に「分からないことがあれば聞いて」と加える

いつ、どこで、誰が、何をすべきか、要点を押さえる

 前回のポイント(1)で「仕事を依頼するときには必ず締め切りの日時を伝える」とお伝えしました。このポイント6ではそこからレベルアップして、「5W1Hの視点」で押さえるべき要点を具体化して伝えます。

 「5W1Hなんて知っているよ」と思われる方も多いと思いますが、あらためて確認しておきましょう。5Wは「When=いつ」「Where=どこで」「Who=誰が」「What=何を」「Why=なぜ」、1Hは「How=どのように」ですね。

 仕事を依頼するとき、リーダーの皆さんは無意識のうちに、ご自身の経験や直感からこの「5W1H」を考えているはずです。その「暗黙知」を、言葉や数字など誰もが客観的に捉えることができる「形式知」にして伝えていただきたいのです。

 例えば、数人のメンバーが仕事をしている場で、「あとで整理整頓をしておいてもらえる?」とお願いしたとします。でも、これではメンバーは「誰かがやってくれるだろう」と思うかもしれないし、「あとでなら、明日でもいいかな」と思うかもしれません。整理整頓にしても、どこを、どんなふうにしたらいいのか分かりません。

 「Aさん(Who)、今日の午後に来客があるから(Why)、午前中のうちに(When)打ち合わせスペース(Where)を掃除して、棚のファイルも整理しておいて(How)もらえる?」

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