「できていること」「できていないこと」を見極める

 ポイント(3)で解説した「行動分解」は、さまざまな場面で役立ちます。例えば仕事ができるリーダーは、部下やメンバーが思うように成果を出せないと「どうしてそんなこともできないんだろう?」「こんなことはできて当たり前なのに」などと思ってしまうこともあるでしょう。でも、部下やメンバーにしてみたら、「ここが分からないから、相談できたらいいのに」「上司はこんなとき、どういうふうにしてきたんだろう?」と考えているかもしれません。それを「できていない」と決めつけてしまっては信頼関係を築くことも、相互に理解することもできません。

 部下が仕事につまずいているときは、「〇〇さんはどうしてできないんだ?」と、個人に焦点を当てて考えるのではなく、部下の行動を分解して、できていることとできていないことを整理してみてください。「ここまではできているけど、ここでつまずいているんだな」という境界線が分かれば、できていないことに焦点を当ててアドバイスをすることができます。

 例えばプレゼンテーションが苦手な部下がいるとします。このとき、その部下に焦点を当ててしまうと、「プレゼンがうまくできない部下」というレッテルを貼ってしまうことになります。そうではなく、部下がプレゼンをしている様子を観察して、できていることとできていないことを見極めてください。

 そうすると、「資料は分かりやすくまとまっているけれど、正確に話そうとするあまり資料にばかり目がいって、顧客の反応が見えていないな」「顧客がせっかく質問をしたそうにしていても見逃しているな」といったことが分かってきます。そうすれば、「〇〇さんの資料は分かりやすくまとまっているから、自信を持って顧客と視線を合わせて話すようにすれば、もっとよくなるよ」などとアドバイスにつなげることができます。リーダーは常に個人ではなく「行動」に目を向けて、それに対するアドバイスで解決に導く習慣を身に付けていけるといいでしょう。

定型業務のリスト化でミスを防ぎ、行動を習慣に

 どのような業種でも、日々行っている定型業務があると思います。伝票や領収書の整理やデータ入力、顧客訪問、接客応対といった定型業務は、誰が担当しても同じように業務を行い、クオリティーに差が出ないようにしたいもの。そのためのツールが「定型業務のチェックリスト」です。いわゆる作業マニュアルとは違い、その業務に必要な行動を分解して、一つひとつ書き出していくものです。

 領収書の整理であれば、「領収書を貼るためのA4コピー用紙を用意する」「領収書をその月の1日から30日・31日までの日付順に並べる」「領収書の上の部分に糊(のり)を塗って貼りつける」「領収書をコピー用紙の左上から右方向へ貼っていく」といった具合です。また、接客であれば、「お客様がいらしたら、3秒以内に席を立って出迎える」「お客様と目線を合わせてから、30度のお辞儀をする」などです。

 こうした定型業務は、新人が入社するたびに毎回教えるのは大変ですし、先輩によって教え方が違ってしまうと、戸惑ったり、ミスにつながったりしてしまいます。そこで業務の工程を見える化して行動のチェックリストを作っておけば、指導する側も教わる側も効率的に業務を進めることができます。

 このチェックリストを使って業務の説明をしたり、自主トレーニングをしてもらったり、新人同士でペアになって互いにできているかをチェックし合ったりといった感じで活用することも可能です。そうしてチェックリストの確認を繰り返していくうちに、行動が習慣化されてミスを防ぐこともできます。チェックリストを作成していない職場では、ぜひ試してみてください。

 今回は、仕事の指示や依頼の際に「理解と納得感を深めてもらう」ための10のコツのうち、前半の5つの項目をお伝えしました。次回は後半の5つの項目について解説していきます。

(構成:田村知子)

日経ビジネス課長塾オンデマンドより

本連載の著者である冨山真由氏は、課長塾および課長塾オンデマンドの講師として活躍中です。課長塾オンデマンドでは、次世代リーダーが身に付けるべきスキルとして「めんどくさがる相手を動かす技術」を解説しています。

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